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1998年に初めて行ったオペラがヴェルディの「ナブッコ」でした。

前知識なく、急に誰かの行けなくなった代わりで、予習する暇もなし。
当時の私にはオーディオもナシ。
記憶には「オペラに行った」という経験と、「なんか難しい話だった」という気分だけがインプットされました。
ナブッコは、紀元前が舞台で旧約聖書を元にした話。
オペラと言えば、カルメンやフィガロの結婚、椿姫のように、全編恋の話で、男女の絡みや、すったもんだがあって、華やかで、という印象しか持っていなかった20歳そこそこのオネーチャンには、舞台から衣装から、そして肝心の音楽まで、全てが「難しい」ものでした。
今年、リッカルド・ムーティ指揮のもとローマ歌劇場管弦楽団・合唱団による「ナブッコ」を観る機会を得て、16年ぶりにして2回目のオペラ、2回目のナブッコを観劇して参りました。
1回目のナブッコの時は、深く掘り下げようという興味もおこらず、CDを手にするにも至らなかったので、今回行くことになって初めてCDを手に入れ、一応持っていた当時のパンフレットを引っ張りだして、聴いたり読んだりしていました。
しかしオペラ全曲通して集中して聴く気持ちの余裕がなく、Legatoで誰もいない時に時々流し聴きしたり、夜帰って眠るまでの間に睡眠のお供に(向いていないけど)したり、英語を覚える時のように無意識下に下地を作っておくというような、そんな程度。
当日演奏中に眠ってしまうのだけが心配でした。
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そんないい加減な下地でも、あるとないとでは大違い。
どれだけ感動したことか!
つまらないように思っていた曲は、どれをとってもとても美しくいい曲なのです。
とりわけ美しいのは、三角関係のアビガイッレとフェネーナ、イズマエーレの三重唱。
アビガイッレの「愛している」という告白と「愛してくれるなら民を助ける」という悲しいほどの訴え、アビガイッレの妹のフェネーナを愛するイズマエーレの「心は渡せない」という確固たる拒絶、そんな状況を嘆くフェネーナ。
この三者三様の思いが三重唱で1つの曲となって、それぞれの気持ちを考えれば皮肉なほど、美しいハーモニーを作るのです。
この矛盾した美しさは、意味を知らずただ聴いているだけではわからなかった。
ナブッコは、「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」が、イタリアの第2の国歌と呼ばれるほど親しまれているそうですが、この曲だけでなく初演当初からすごく人気の高い作品で、1842,46年の2シーズンだけで137回も上演されたのだそうです。
それだけのものなのに何も知らずに聴いて良さが分からないというのも間抜けな話ですが、簡単にわかるものより、知れば知るほど、噛めば噛むほど良さがわかってくるものは、飽きずに長く付き合えるもの。
16年越しに魅力を知った後は、ここのところ毎日ナブッコの曲の美しさ、奥深さにうっとりしたり感動したりしています。
百田尚樹さんも「至高の音楽」で、クラシックは何度も聴いているうちにいきなり「くる」・・・というようなことを書いておられました。
本当にそうですね。
いきなり「きて」、あとは感動が洪水のように押し寄せてきます。
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