ヴィンテージオーディオ

タンノイ Autograph/モニターレッド
販売価格¥3,200,000(税別)
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今回はTANNOY Autographにスポットを当ててみたいと思います。

TANNOY Autographが発表されたのは1953年。
オートグラフの第一号機として15インチのモニターシルバー(同軸ユニット)を搭載していました。
当時既に人気になりつつあったヴァイタヴォックスのCN191やエレクトロボイスのザ・パトリシアに対抗するため、
タンノイの創立者ガイ・R・ファウンテンとチィーフエンジニアのロナルド・H・ラッカムが、NYのショーで「家庭用の最高峰」としてデビューさせました。

Autographの構造
オートグラフは、フロントのショートホーンと、複雑な折り曲げ構造によるバックロードホーンのコーナー型のシステムです。
その存在感のある美しいエンクロージャーと手の込んだ構造が魅力ではありますが、ご承知の通り、搭載されている「デュアル・コンセントリック」と呼ばれる2ウェイ同軸型の高性能のスピーカーユニットが最大の魅力であると思います。
デュアル・コンセントリックは前記のように2ウェイ同軸型設計になるので、低音用にフロントロードホーンを用いることは出来ませんでした。
したがってウーファーの背圧にロードをかけるバックロードホーンを用い、エンクロージャーフロントには中音用のシンプルなショートホーンを組み合わせたのです。
ユニット配置はエンクロージャー上部の奥に取り付ける構造になっていて、フロントショートホーンが大きく開口しています。
ユニットの背面にはウーファーにロードをかける折り曲げ型のホーンが構成され、音道はユニット後部から一気に底部まで向かい、途中でフロントパネル方向に曲げられ最前部で左右に分かれ、そこから再度後方に向かって折れ曲がり、エンクロージャー奥で更に急角度に曲がり、コーナーに沿って拡がりながら開口部に達する・・・かなり複雑で長い距離の音道になっています。
また、この複雑な造りは、エンクロージャーの鳴きを抑えるのではなく適度に箱鳴りして、楽器的な響きを出せる設計になっています。

Autographの歴史
オートグラフは1953年に発表されてから改良され現在の私達が知るデザインになったのは1955年のことです。
同じ15インチのデュアル・コンセントリック搭載のコーナー型で一回り小さいGRFが発表されたのを機にオートグラフのデザインも一新されました。
そして1957年にはモニターシルバーからモニターレッドに入れ替わり、1967年頃までモニターレッドの時代が続き、その後、モニターゴールド、HDP385 と変わっていきます。
1974年にモニターゴールドの生産が終了すると同時に1953年から21年間フラッグシップ機として君臨し続けたオートグラフも生産を終了することになりました。
そしてその2年後の76年に日本での輸入代理店がシュリロ貿易からティアックに変わります。
日本では五味 康祐氏の影響もあり壮大な人気を誇っていたことから、ティアックはオートグラフの生産再開をタンノイに要請しましたが、木工技術者の確保などの問題で応じてもらえませんでした。
諦めきれず日本でのライセンス生産を計画し、本国からは「オリジナルの品質と全く同じエンクロージャーの生産が日本で可能なら販売を認める」との回答を得て、1976年にオートグラフは日本で復活を果たすことになったのです。

SOUNDCREATEオリジナルのAutograph<キャビネット>
そんな歴史のあるオートグラフですが、今回ご案内しているものはSOUND CREATEとアトリエJe-Tee(※)さんとのコラボレーションで作ったオリジナルエンクロージャーのもの。
作成にあたり色々と試行錯誤を重ねた結果、エンクロージャーの材質はモニターゴールド時代の英国オリジナルGRFに使われていたバーチ材合板を使用することにしました。
バーチ材は堅い木材として知られ、且つ響きも良く数多くのスピーカーメーカーがフラッグシップモデルに採用するなどしています。
今回は複雑なホーンのつくりの再現と楽器的な響きを消すことがないように、バーチ材の中でも高級なフィンランドバーチをふんだんに使用し、サイズ、デザインはもとより前記で述べました複雑な内部構造も忠実に再現したAutographのエンクロージャーを完成させました。
※TANNOY英国オリジナルモデルのAutograph、GRFなどを数多く取り扱われているヴィンテージ専門店

<ユニットについて>
そしてデュアル・コンセントリックのユニットは、モニターレッドを搭載しました。
モニターレッドはTANNOY Monitor Red LUS/HF/15-Lという正式名称で1957年にMonitor Silverをステレオ時代に合わせて誕生したアルニコ製のユニットです。
モニターシルバーの中音の密度にステレオ再生に合わせるべく上下の帯域を広げています。
1957年から67年までの10年間と長く作られていて、一般的には、センターキャップが飴色タイプ(最初期)とブラックタイプの2種類です。
しかし、ブラックのユニットにも更に2種類あり、最終型のものはマグネットカバーがプラスチックになっており色が何とも派手なピンクになっていました。
通称「アメイロ」タイプは本当に希少なもので、中域が濃くモニターシルバーにほぼ近い音の傾向になります。
モノラルとステレオ時代のイイとこ取りをした感じです!!
ブラックのセンターキャップは、飴色に比べるとワイドレンジになり、 ステレオ時代到来を感じさせます。
フルオーケストラのホール感も大変良く 、いよいよ日本上陸が近づいて来ます!

因みに五味 康祐氏のオートグラフは1964年に納品されていますので63年製のオートグラフでモニターレッド(ブラックタイプ)になります。

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<試聴記:OCTAVE V40SE(6550/EL34)>
前置きはそろそろ、試聴記に移ります。
今回もOCTAVEの真空管アンプで聴き比べをしてみました。
プリメインアンプV40SEでEL34と6550、2パターンで試してみました。
以前のTIMESの記事(Windor編)で記載しているように、英国オリジナルエンクロージャーのオートグラフ(ユニットはモニターゴールド)、特にユートピア箱(モニターゴールド)はV40SEのEL34がベストでした。
しかし今回のオートグラフのエンクロージャーは新しく製作したもので、ユニットはモニターレッドですので前回のオートグラフとは違った結果に。

今から聞こうとしていたところ、最近ヴィンテージスピーカーに興味をお持ちのお客様がご来店されたので、一緒に比較試聴をして頂きました。
お客様は女性ボーカルを聴くことが多く、マデリン・ペルー、ダイアナ・クラールなどで比較。
先ずはV40SEで6550から聴いてみました。
ボーカルと中域にも厚みがあり量感もばっちり出ます、お客様は「これ、いいね」という声を頂きましたが、
V40SE(EL34)で英国オリジナル オートグラフを聴いたときの説得力や空間再現力が今一つです。
次にV40SEをEL34に替えてみました。
すると6550で聴いたより声がリアルになりました。
オートグラフならではの響きが出てきて、空気感も増します。
聴いていて気持ちがいいのです。
お客様も「これは・・・、こんなに違うの?」
響きが良く抜けもいい、6550は少し重たく聴こえるね・・・
EL34のほうが、お客様も私も文句ない組み合わせということで意見が合致しました。

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<試聴記:OCTAVE V70SE(6550)>
お客様がお帰りになられた後、Jazz,クラッシックなど次々と聴いてみました。
聴いていてだんだん若干の「?」がわいてきます。
物凄く良いのだけど、やはり耳に残っている英国オリジナルと比べてしまいます。
今一つ物足りない気がしてきました。
そこで、なにとはなしに隣にあったOCTAVE V70SE(6550)に繋いでみることに。
するとびっくり、クラッシック音楽では中域に厚みが出ながら、高域・低域が物凄く伸びます。
レンジが広がりチャイコフスキー:交響曲第6番などのオーケストラは朗々と鳴り始めました。
JAZZはスイング感も出てリズミカル。
クリス・ボッティのトランペットは気持ちよく、伸び伸びとしてその上、しっとりと聴けます。
そして何とも言えない響きがあり、尚且つ量感がしっかりと出たのです。
「この」オートグラフには、V40SEよりもV70SEが間違いなくマッチしていると思いました。

エンクロージャーはフィンランドバーチ材を吟味してオリジナルを再現していますが、
考えてみれば乾燥の状態がオリジナル オートグラフとはまるで違います。
これは5年、10年後が楽しみです。

ユニットもモニターレッドになるので前回の英国オリジナル オートグラフやユートピア箱とは全く別のスピーカーシステムです。
モニターレッドは、モニターゴールドに比べてデリケートなユニットだと感じました。
モニターゴールドは、モニターレッドに比べて低域の量感もたっぷりダイナミックレンジかなり広くなっています。
モニターレッドは、ゴールドには無い絶妙な低域のキレがあります。中高域の表現も随分違います。
そのため、アンプ選びもデリケート!!
OCTAVEの中でも、ヴィンテージのJBL(C38バロ、C40ハークネス等)と相性の良いV70SEが良いのです。
不思議なものですが、こうして聴いてみて、考えてみれば納得のいく話でもあります。
アンプの特徴とモニターレッドの繊細さが正にマッチしたのだと思いました。

TANNOYのオートグラフ、GRFはユニット入れ変えて、オクターブは真空管の差し替えで音楽を楽しめます。
このオートグラフは何時でもご試聴可能です。
是非、ご一聴くださいませ。

 

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