
ここのところ、午前中の納品で出ることが多く、腰を据えて店のシステムをセッティングするのは少し久しぶりでした。
(皆で持ち回りでやっていて、店に居るスタッフが準備する)
今日はLINN 119とMAJIK DSM5、MAJIK LP12SEのご試聴。
いつもチェックディスクはいくつかあるのですが、今日はちとマジモードだったので、フランク・シナトラの「Send In the Clown」から。
シナトラはどのアルバムも録音も大変すばらしくて、ストリングスなども入っているので、シナトラで合わせればボーカルは勿論、JAZZでもクラシックでもロックでも、間違いない。セッティングするのに持ってこいなのですが、結構セッティングにシビアなので、気忙しい時はつい避けてしまったりするのです。
「Send In the Clown」で、ある程度壁からのスピーカー位置や、左右バランスを調整して「Fly me to the Moon」へ。
Fly me to the Moonは、カウント・ベイシーとやっている盤で、最初のドラムの音や、シナトラの定位、ビックバンドの広がり方や、音がつぶれないかなどなど聞くのですが、この盤でセッティングして15年以上。
路面店のLegato時代に一番セッティングで使った曲でした。
その前、秋葉原時代になりますが、そもそもシナトラの音源でセッティングを始めるきっかけになったのは
「Strangers in the night」
あ、右の響きがにじんでいるな・・。
むかしを思い出して、右側のスピーカースタンドと床の間に5㎝角くらいのカシミア布の切れ端を入れました。
ここがミソですが、片側だけ入れるのです。両側ではなく。
右のにじみがスッと抜けて、右の低域が明瞭になる。
そうするとセンターから少し左の壁のあたりの音がないから、その音を埋めるのは・・・。
あの頃、今のようにセッティングは楽ではなくてミリ単位で合わせないと、シナトラは中々センターに来てはくれず、ましてやスピーカーにガタがあったり水平が取れていなかったり、ケーブルの端子が緩いとうるさくなっちゃうし(今考えるとアースの影響もあったのかも)、セッティングがとても時間がかかって大変でした。
LINNのMAJIKが新しくなるたびに思うことですが、いい音を出すのに、苦労する必要がなくなっていくのです。
自分の経験値の問題もあるけれど、やっぱりオーディオはこの20年で目覚ましく良くなっていると思います。
でもなんだかしみじみと、20年前に朝に晩にと費やした時間を愛しくも思います。
吸音、拡散、どこに音が届くか、影響するか、音の道を作る、音の道を見るのに一生懸命でした。
シナトラに育ててもらったなぁ。
10年後のシナトラはどんな風に聞こえるんだろう。
(竹田)