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自分が音楽を欲しなくなったことが、少なくとも過去二回あります。

一度は、前職でリストラされた時。当時でもまだ花形と言われた航空会社に勤め、行き先は常にイタリア。20代前半ですから、ステイタスみたいな言葉への満足感と、大好きなイタリアへ行けることで、イイ気になっていたでしょう。9.11の影響をもろに受け、便数の減少と共に人員削減の知らせは突然やってきます。世の中の暗雲より自分のことで一杯。与えられていた仕事を取り上げられることは、自分の居場所を失ったようにも感じ、この時はしばらく音楽を聴いていませんでした。

もう一回は2011年の3.11。この後の各地の大地震や災害にも心を痛めるのですが、3.11は、世の中はもしかすると終わるんだという意識を持った初めての時でした。阪神大震災ももちろんなのですが、情報社会の促進によるからか、積み上げてきたものが音を立てて崩れていく感覚でした。増して、サウンドクリエイトに勤めて、オーディオを生業にしているのに、音楽を聴く気分でないとはどうしたものか。

それでも朝は来るし、どんなにしたって時間は前にしか進まない。やがて、音楽を聴けるようになります。

でも、そう考えると、どん底の時は聞けなくて、少し元気になったら聴ける。そしてパワーをもらう。

古くからのお客様が、心が健康でないと音楽は聴けないと仰っていました。

でも、どん底を経験したら、次に聴く時の音楽の素晴らしさは、また格別。

音楽のほうは、パッケージに収められた時から変わることはない。変わるのはこちら。だから何度も何度も聴くのでしょうか。
変わった自分を確かめるために。

音楽を聴けるというのは、幸せなこと。
生きてる証のようなものかもしれません。

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(竹田)

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