仕事に絡めて1日京都へ。
★ さて、どこ行こう
「そうだ京都、行こう」の気持ちはいつでもある。しかし、今回は「さて、どこ行こう」となった。
街中の好きな神社は大体二巡りくらいしているので、たまには少し遠出をしてみようかと思う。
行きしな新幹線で地図を見ながら考える。
嵐山、苔寺、比叡山延暦寺、貴船神社・・・
所要時間やらなんやらを調べて予約が必要な苔寺は今回は省く。
何だか迷う。とっても迷う。いつも迷わないのに。直感で決めたいのに、考え過ぎる。
宗教学者の島田裕巳先生の本に「貴船神社」のことがあったのを思い出す。
貴船神社は、鴨川の水源地にあって水の供給を司る神様を祭るともある。
占い好きの私は、生年月日で占う算命学の占いで「雨」という主精(※)を持っている。
水にちなむことにして、貴船神社―鞍馬寺コースを選択。
※他は、「花」「山」「鉄」「宝」「陽」「灯」「樹」「地」「海」がある。
★ 小雨降る
駅に荷物を置いて、電車、バスを乗り継ぎ1時間半ほどで鞍馬寺。
最近はGoogle Mapの指示に従えば初めての場所でも呆気なく到着する。
しかし、よく調べないで来てみたが、中々な急坂。
天狗のお面横目にまずは蕎麦屋に入る。
蕎麦屋を出たら小雨が降っている。
入口でもらったMapを見ると、全部回ると鞍馬山を登って降りた感じになり、貴船神社へ抜けられる。
無理は禁物。ゆっくり歩を進める。
一段一段上がって気が付けば、さきほど見上げた上の道にいつの間にかいて、仕事って、こういう感じだったなと思う。
1段1段地道に上がってきたらいつの間にか今がある。
それを評価してくれる周囲がいたのでこの仕事は今の幸せなライフワークになっている。
ものすごく恵まれている。
子育ては、こういう風には行かないから世の中の母は強いなと思う。
自分の足だけなら自分で責任持てるもの。
人を登らせるのは大変だ。
雨は降るが、木が傘になってくれる。
気温は高くなかったけれど、雨は柔らかく慈愛に満ちて、なんとなく歓迎されているような気がする。
足元は濡れているけれど、かえって気を付けるからよかったように思う。
上って登って登ってやっと本堂まで。
鳥居をくぐる時、出る時の一礼は、昔は気恥ずかしかったけれど、思えば人の家にお邪魔するのと同じ。
今日はなんだかいろんなことを思う。
雨は相変わらず降ったりやんだり、時々晴れ間が見える。
そして日に照らされる石の光や木々のみずみずしさにまた息をのむ。
本堂には、毘沙門天さまを中央に、右手に千手観世音菩薩さま、左手に護法魔王尊が祀られる。
鞍馬寺の説明には、
「月に代表される水の氣、太陽から放たれる氣、母なる大地 、地球の氣の三つの「氣(エネルギー)」にあらわし、それぞれを
月輪の精霊―愛=千手観世音菩薩
太陽の精霊―光=毘沙門天王
大地の霊王―力=護法魔王尊
のお姿であらわして、この三身を一体として「尊天」と称し ます」
とある。
地球全部じゃん!?と、なんだか得した気分。
「千手観世音」という名前は、「世の音を観る」と書くのがすごいなと思った。
音のように見えない、しかし空気に確かに現れる世の中を観察して、千の手でそれを救うのだろうか。
よく知らずに罰当たりかもしれないけれど、お名前のままなら、と想像を逞しくする。
ところで、あとでWikipediaしたら、「日本における毘沙門天信仰は、鞍馬寺が発祥」とのこと。
神様の信仰もあると思いますが、自然信仰の日本では、この自然の中をこの規模で歩けるのは、まさにというか、いいなと思う。
★ 天狗になる
途中大きな葉を拾う。
葉を片手に持って登ると足取りが軽くなる。
手ほどの大きな葉は風を受けて風の方向を教えてくれるようで、知らぬ間に風に身を任せているのかもしれない。
天狗になった気分。
木の根が露わになった一角。
様々な現代アートも自然のこの姿には敵わないと思う。
中央に立ったら、ザザザッと風が吹いた。
映画のワンシーンのような。
天狗かしら。
また、歓迎されていると感じる。とっても楽観主義。
元気が出て、貴船の方へおりていく。
降りる方がずっと大変で、それでも途中たくさんの杉の木や、濡れ落ち葉の光るのに助けられて下山する。
貴船の方から上がってくる人と道を譲り合い、声を掛け合いながらなんとか降りた時には、脚ががくがくになっていることに気が付く。
貴船神社までは歩いてすぐ。
入口に着いたらまた階段だけれど、もうなんのことはない。
お参りをして顔をあげると、まだ少ない紅葉が美しかった。
雨足が急に強くなり、バスで貴船口へ。
バスを待つのに雨宿りのつもりで待っていた貴船口駅の改札から見えたホームの向こう岸が、紅葉でとても綺麗でつい電車に飛び乗る。叡山電鉄という2両編成の小さい電車。
途中、前も後ろ右も左も紅葉の中を通る美しい箇所があって、隣に座っていた老婦人が二人「ここだけトンネルになってるのよね。それでゆっくり走るのよね」と話していた。こういう世間話、尊い。
写真には納めなかったけれど、とても美しいひと時だった。
二度と来ないかもしれないけれど、もしまた来ることがあれば帰りは電車で帰ろう。
(竹田)