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16日の午後、スマホのニュースアプリが樹木希林さんの訃報を知らせてきました。前の日の夜中に亡くなったのだと。

癌だという割に、次々映画には登場するし、ずいぶん前からおばあさん役だったから、何歳なのかも知らなかったし、ずっとこの世に居続ける人なのかと思っていました。

改めて考えてみると、どこにでも顔を出しているように思えて、何で観たか思い出せず…。

訃報のあった晩、ご納品先のお客さまのお宅で、是枝監督の「歩いても 歩いても」のさわりを大画面で見せて頂いたら初めて観るくらい忘れて居て、先日の晩やっと改めて見なおしたのでした。

今から10年前の映画。当時でも、ここで描かれるような「昭和の家庭」の雰囲気は希薄になっていたと思いますが、今見ると一挙手一投足、台詞の一つ一つが、もう本当に「あった、あった」「こうだった」「おばあちゃんこんなの着てた」「こんなこと言ってた」ということ満載で、幼少の頃見てた両親や祖父母を重ねて郷愁にかられるのでした。

昔は、家族もちょっとしたことでも集まって、集まれば人数も多くて、映画の中のように依怙贔屓もあれば、お嫁さんの感じる疎外感や、姑の悪意ないようなあるようなイビリまでいかないちょっとした一言、などなど、本当に普通の光景で、母の気分、祖母の気分など、別に観察力がなくとも子供の頃から肌で感じていたように思います。

映画の中と少し似て、父の弟が小さい頃に亡くなっているので、自分より早く子供を亡くした祖母の、普段は明るくしていても、時折どこか世を恨むような感じとか、ものすごく重なって…。

樹木希林の演技は、静かに危機迫っていて、でも、人間て常に悲しんでたりしなくて、起伏が激しいわけでもなくて、本当にこんな感じだよな、と深く納得したりしたのでした。

別の映画、画家・熊谷守一の一日を描いた「モリのいる場所」では、熊谷の奥さん役でしたが、全然タイプの異なるお婆さんで、他にもたくさんあるでしょうが、この演じ分けるところ、この人がいなくなったあとは、誰が居るんだろうか…。

なりたいと思ってもそうそうなれる存在でなく、唯一無二の人だったと、改めて寂しく秋を感じた夜でした。

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