5月のゴールデンウィークに、LOUNGEで開催したイベント「ビスポークシューズと音楽」の折に注文した靴が出来上がってきたことは、すでにご報告しました。
製作過程の写真が欲しいなぁ〜とお願いしたところ、たくさん写真を頂きました。
一枚一枚の説明は省きますが、たくさんの工程を経て、こんなに丁寧に作られているとは、メチャクチャ驚きで、せっかくなので、一気に公開いたします!
Alte Artさんで作るのは2回目でしたが、久しぶりということもあって、再度足型を取ってくださいました。
計測したところ「あれ、痩せました?」
嬉しいけど体重は増えているし、そんなこと普段言われないので、それはおそらくヨガに通っているから足のバランスが変わったのかもしれません。
前回作った木型を修正してくださることになりました。
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裁断、製甲・・・
一番左の写真、履き口が伸びてしまうのを防ぐために、3mmの綿テープを貼っているところ。
これで、アッパーの完成。
次は中底加工から釣り込み、すくい縫いまで。
左から3枚目は中底加工の完成図。
横にあるのは、中底を加工時に切り取った一部で、あとでまた使うのだとか。
どこで使うかこの後ご注目。
4枚目は釣り込みに使うもの。
釘、「わに」と呼ばれるペンチ、ハンマー、「月型(カウンター)」と呼ばれるかかとの芯→革
左から二枚は釣り込みの作業。
ちなみに、「釣り込み」というのは、アッパーを木型に添わせる作業。
3、4枚目はすくい縫いをしているところ。
ウェルト(細革)をすくい針で1針1針穴をあけながら、中底・アッパーに縫い付けているのです。
すくい縫い(ウェルティング)完成!
やっとここまできた!
お次は中物から出し縫いまで。
左から1枚目は、中底加工時に取っておいた革を、元どおりに貼っているところ。(ココで使うのか!)
段差が埋まり、この後の「中物」と呼ばれるコルクの量を減らせるのだそう。
3枚目、シャンクと呼ばれる、土踏まずのアーチを支える芯を入れています。
(これはスタンダードラインでスチール製のものを使用していますが、ヴィンテージラインはまた工程が少し、いや、だいぶ?異なります)
最後の2枚は、底面をフラットにするための「中物」を入れているところ。
材料は、メーカーによって異なり、フェルトとかコルクボードを切って貼ったりしているそうですが、Alte Artさんでは、より繊細な隙間にもきっちり入るよう、細かいコルク粒を小麦粉原料の糊をつなぎにして入れているとのこと。ヒェ〜!
それからそれから、この糊も、通常はシンナー系のゴム糊を使用することが多いのですが、通気性を鑑みて小麦粉原料のものを使用しているのだそう。
うーむ、なんとなくオーディオに通じるところがありますな。
本底を仮止め。
通常、作業のしやすさから、底面全体に糊を塗り本底をくっつけてしまうが、Alte Artさんでは通気性や柔軟性を鑑みて、周りの部分のみに糊を塗り、仮止めに留まっている。
履く人にとって通気性と柔軟性はとても重要な要素だと思いますが、作り手の方がそこにこだわるかどうかは別の話ですものね。
ドブ起こし。
本底の周り7ミリ・約2〜2.5ミリ厚に包丁を入れて、その部分を起こす。
この厚みが薄すぎるとこの後の出し縫いをした後、縫い目が浮き出たり、履いていて、すぐに糸目が切れることになる。
が、厚すぎると、本底を貫通して靴としてダメになってしまう。
…まさに職人技。
出し縫い。
ウェルトと本底を出し針で1針1針穴をあけながら縫う。
なんて長い道のり。まだあります。
「このあと、”ドブを伏せる”という作業があって、出し縫いが終わった状態で、ドブ起こしした革を、綺麗に伏せて本底をフラットにしますが、ここ写真撮り忘れました。ゴメンナサイ」
いやいやいやいや、こちらこそこんな大変な作業をしているところに、気軽に写真などとお願いして、もう恐縮至極です。
本底の踵部分を、中底に固定。
ペースと呼ばれる木の釘を使ってます。
多くのビスポークメーカーは、タックスと呼ばれる鉄釘を使うことが多いですが、Alte Artさんでは昔ながらの木の釘を使ってます。
鉄は水分を含むと錆びてボロボロになってしまいますが、木は、水分含むと膨らんで、より強固に止まるという利点がある!
そのあと、ヒールの積み上げ。
「このモデルのヒールだと、だいたい片足8枚前後の革を1枚ずつ積み上げて行きます。
ヒール部分は、傾斜がついているのと、お椀状になっているので、ただ積み上げていくことはできません。
ヒールの前方と後方では、高さが変わってくるのですが、それを8枚でバランスよく分散させるのと同時に、お椀状になっている曲面をフラットにしていきます。
左右あるので、2つの形や大きさ等バランス整えながら、包丁で整えていきます。」
なんだかLINN LP12の工程を見ているようですね…。
「この後、ヤスリ等々でヒールや側面(コバ)を仕上げていくのですが、すみません。写真撮りそびれました。」
いや、本当に申し訳ない…。
木型を抜いた後、かかと部分のペース(木の釘)が出ているので、その頭を潰しながら、削っていきます。
ペーガラ取りという作業。
ペースの頭を潰すことで、頭部分が広がりペースがかしめられた状態になります。
かんせ〜い!!!
長い長〜い工程でした。
そして、「オールハンドメイド」って、気楽にきいていましたが、こういうことだったのね…。
履き心地は、初日から信じられないほどのフィット感です。
Alte Art ウェブサイト