グルジア出身のピアニスト・・というより、ゴージャスでグラマラスな若手ピアニストと言ったほうが「アーあの人ね」となるかもしれない。
Khatia Buniatishvilli(カティア・ブニアティシビリ)、その人の最新作が、この数日の間にTIDALでアルバム全曲聞けるようになりました。
つい先日LINN JAPANの古川さんと顔を合わせた折「最近のお勧め」を尋ねたところ、絶対これ、と教えていただいたものですが、その時点ではまだ数曲しかTIDALにアップされていなかった。
多分本当にこの2,3日で全曲上がったのではないでしょうか。
アルバム全貌を聞いたら、、、古川さん曰く「無条件降伏」。
私はもう、しゃべりたくなっちゃって、まだ聞きこんでもいないのに今日のブログです。
この方の真骨頂は、コンチェルトでも合奏でもなく、絶対にソロだと思ってはいましたが、今回確信しました。
おそらく日本でブレイクしたのは、蝶や花に囲まれた愛らしいジャケットの「Motherland」ではないでしょうか。当時彼女は20代後半。
可憐で初々しく、思慮深い演奏が素敵で、またアンコール曲のような短い曲を集めた選曲も楽しく、色々な味の金平糖のような1枚。
その後も1年半に1度くらいの間隔でリリースし続けてくれるのでファンには嬉しい・・
いやいや、今日はそんな宣伝的な話しをしたいのではなくて・・・。
その6年後の今リリースされた今回のアルバム「ラビリンス」は、なんだかすごいのです。
収録曲は主にこんな感じ
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1. モリコーネ『デボラのテーマ』
2. サティ:ジムノペディ第1番
3. ショパン:24の前奏曲~第4番
4. リゲティ:練習曲第5番『虹』
5. J.S.バッハ:管弦楽組曲第2番ロ短調 BWV.1067~バディネリ(4手版)
6. J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV.1068~G線上のアリア
7. ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34-14(アラン・リチャードソン編)
8. セルジュ・ゲンスブール:ラ・ジャヴァネーズ
9. ヴィラ=ロボス:苦悩のワルツ
10. F.クープラン:謎の障壁
11. J.S.バッハ:協奏曲ニ短調 BWV.596~シシリエンヌ
12. ブラームス:間奏曲 Op.118-2
13. アルヴォ・ペルト:パリ・インテルヴァロ
14. フィリップ・グラス:「I am going to make a cake」
15. D.スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K.32
16. リスト:コンソレーション第3番
17. ジョン・ケージ:4分33秒
18. J.S.バッハ:協奏曲ニ短調 BWV.974~アダージョ
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収録曲の幅の広さとかではなく、映画「ワンス・アポン・ア・タイム」の「デボラのテーマ」から始まるのですが、その間の取り方。一音一音の意味深さ。
Motherlandの時から、明らかに演奏する人間の深みが増しているのがすぐに聞いてとれる。
曲送りすることなく聞き入ってしまうのですが、ついでに曲の背景とは何の関係もなく、それぞれの曲に感じたことをひとこと、ふたことで表してみます。
1.憧憬
2.子供時代あるいは水面下での輪廻あるいは螺旋階段
3.別れ
4.変化、気付き
5.焦燥
6.幸福感、喜び
7.悲しみ
8.楽しみ、軽快、気楽
9.自分を見る・・知ること
10.繰り返すこと、日々
11.落胆
12.なつかしさ
13.1人
14.考えるより行動
15.寂しさ
16.安堵
17.祈り。時に空虚
18.静かに始まる
人間の様々な感情や局面をピアノという1つの楽器で表しているように私には聞こえるのです。
「ラビリンス」とは「迷宮」と訳しますが、その語源は、ギリシア神話で狂暴化していくミノタウロス(怪物、魔物)を閉じ込めた宮殿にあります。1200を超える部屋があり、宮殿を彷徨い出られなくなった怪物。
人は誰しも凶暴さをもっていると思います。
凶暴さと言うと語弊があるかもしれないけれど、そうした強い衝動は、もしかすると活力であり、生命力かもしれない。
一言では表せないほど様々な感情、多面的な局面を持った人間は迷宮に迷い込みがちだけれど、その自分の感情の動きに驚かずに、それを飼いならして、何か別のものへ転換させる。
ブニアティシビリの演奏にそんなことを思いながら、虚空を見つめるようなアルバムジャケットを見て、もしかして名曲がありすぎて、音楽の迷宮に捕らわれたお姫様!?
などとも思うのでした。
今日のはファーストインプレッション。
しばらく聞きこんでみたい1枚。
(竹田の熱弁)