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弊店、オリジナルでキャビネットを製作し、そこにヴィンテージユニットを入れるということを以前からやっております。ここのところ、キャビネットは基本フィンランドバーチを使おう!(以前は米松やMDFを使ったことも)ということで定着していますが、キャビネットが出来てユニット入れて終わりではなく、ユニットを入れた状態で音を聴き、内部の吸音をしたりなんだリ・・と言う調整があります。

しばらく置いてあるJBL Minigonをモディファイしたこのスピーカーは、来月からひと月、渋谷のイベントに貸し出し予定で、調整を詰めることにしました。

ユニットはJBL D123を片側一基ずつ。
吸音の場所は大体決まり良くなりましたが、今一つ抜けない・・。
もう少しソニー・ロリンズのサックスが抜けてほしいし、マックス・ローチのドラムのシンバルなんかがキラッとキリっとすると調子が出てくるはず。(St.Thomas)クリフォード・ブラウンの慕情、こちらもドラムはマックス・ローチ。シンバルから入って、まるでクリフォード・ブラウンの人生みたいにめくるめくスピードの慕情。
ちょっとやはりまだ足取り重い。

さて、こんな時はさらなる吸音・・・ではなく、「板」なのです。

キャビネットの内部で、ウーファーの背圧を受けて響きがこもってしまうところに板を張る。
これ、簡単ではないのですが、慣れてくるとめちゃくちゃ難しくもない・・というか結構楽しい作業なのです。
(聴いているだけなら。)

まずは、背板を開けて、鳴らしながらどこが響いているのか手で触るなどして、響きの多そうなところなどを探し、検討を付けます。
構造上弱いと思われるところと実際の響きから自分の中でロジックを立てて、聞いていく。
思惑とは逆に行く場合も何かしら理由があります。

そこから横に動かしていく、前後など。
これはまぁ一人で変えては聴く・・と言うのは途方もなく大変ですが、店では年功序列で若い人が作業する。
でもスピーカーの近くにいても変化は分かるので、そうして覚えてきたかなぁ。

昨日はこの作業に加藤がハマって「今の場所、(こもりが)抜けましたね!」「・・・さっきのがよかったかな」とやっていたら、今朝の準備中に呼ばれて行ったら新しい1枚(青テープ)を試してみたが聴いてほしいと。
もう少しクリアにならないかと思って、一人で板を付けたり外したりして聞いたのだそうです。

キャビネット内部に貼る板は色々試したところケヤキが良いことが多い

あり・なしを聴いて、ありのほうが低域が前に伸びるのを確認し「アリだね」となったのですが、
実はこの面は、横のラックとネジ留めしていて板が二重になっているため、手で触れた時は響きが少なく、追加の板は必要ないと勝手に判断していた面でした。

左右両方付けるとまた結果が変わったりして、かりんの板ではなくケヤキに変えるなどして、また他のスタッフにも聞いてもらい意見をもらう。
最終背板をねじ留すると、また多少変わるので、板を少し下に下げたり上げたり、あるいは小さくしたり・・などと言う風に仕上がっていくのです。

昔何かの本で、かの有名なルネサンスの彫刻家ミケランジェロは、石の中にその存在を見て、彫り出していたというような記述を読んだことがあります。(実際そのような言葉を残しているらしい)
レベルの違う話ではありますし、そもそも知っている音楽なんだけれど、この作業の時、ちょっとミケランジェロの言葉を思い出します。
マックス・ローチの、ポール・チェンバースの、アート・ブレイキーの、ハービー・ハンコックの・・・掘り当てていく。
そう考えるとドラムやベース、ピアノを主に聴いて判断しているかなぁ。
低域が見えてくれば自ずと高域も音が立ってくるので!
(竹田)

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