「これもスピーカーなの?」「はい。アメリカのEMPIREのスピーカーです」
「エンパイアーって、プレーヤーとか、カートリッジとかの?スピーカーも作ってたんだぁ。」
今から半世紀も前に、こんなモダン出美しいデザインのスピーカーがあったなんて、本当にすごい国だと思います、アメリカは。
EMPIREを見ていると、音楽や絵画、建築の芸術作品と同様に、必ずしも新しいものがよいというわけではないなぁ、と思います。
当時のEMPIREの広告を見ると、籐製のソファや美しい電気スタンドなんかと一緒にリビングに置かれ、家族で音楽を楽しんでいるようなイラストが描かれて、古いアメリカ映画で見るような光景そのまま。
かといって、デザインが美しいだけの懐古主義的なものとは一線を画す、大型のアルニコマグネットを使ったドーム型のツイーターとミッドレンジ、下向きに取り付けられた40cmウーファーの3WAYシステム。
中高域はフェノリック製のダイアフラムで、出てくる音に輝きがあるのは、このユニットによるもの。私はこのユニットを初めて目にしました。正面に見えるツイーターが納められたシャンパンゴールドのカバーはアルミ削り出し!
ウーファーは、吊り下げ型でなく、上下からしっかり固定。下向きにウーファーがついているというのはよく見ますが、大抵が吊り下げ式なのだそうです。
布製のエッジも触ってみましたがしなやかで軽く、低域のブレが無いのは、動くべきところと頑丈に作るべきところのポイントををしっかり抑えているからなんだなぁ、と感心してしまいました。
何十年も前のものなのに、7角形のキャビネットといい本当によく出来ている。
デザイン・音・作りが丁度良いバランスで揃っている、モノとして超魅力的な製品です。
写真は、60年代に発表されたEMPIREの最高級機9000-M。
そう、これはスタッフAの我が家でございます。
折角のEMPIREも現代風の一人暮らしのマンションに置かれても、カッコよさを発揮できないんじゃないかと思いましたが、逆に部屋に風格を与えてくれました。
意外と選ばないのかも・・・。(しかも、スタンドなしでボード直置きにされていたTC10Xのよいスタンドにもなっている・・・。)
店から借りてきたNuForceのプリメインで鳴るかなぁ、40cmウーファーだし・・・。という思いも束の間のこと。(いずれV80で鳴らす・・・という算段をしているところ)
「おぉぁ~」
いいねぇ!やっぱり!
素晴らしいスピーカーです。このEMPIREは。
全く古くなく、その名「エンパイアー(帝国)」のごとく、どっしりと揺るぎない貫禄と大らかさを持ち合わせ、なおかつエレガントで高貴な音。
見た目の雰囲気から、初めは古い録音のものから聴き始め、そのうち何でも・・・。
日本のシャンソンの金子由香利、シャンソンつながりで仏BARBARA(余談ですが、BARBARAの一曲を聴いてPIEGA TC10Xが我が家の一員となったのでした)
クリス・コナーやアニタ・オデイのハスキーボイスもこれで聴くと下品にならず、丁度よい肉感的な厚みがあって、心に訴えてきます。
PIEGAのクールで美しい鳴り方とはまた全然違って、両方の楽しさがある。
クラシックでは、デュプレのチェロの鳴り、オイストラフの弦の響きも美しく、「うーん、もっとボリューム上げて聴きたい・・・」というところ。(深夜のため)
九ちゃんとか、サザン、キャノンボール・アダレイ、最近買ってみたオムニバスのBEST HITS100から女性ボーカル数人。(ジョーン・バエズのimagineよかった・・・)
ホロビッツのライブ録音では、小さい音ながらもおぉ、40cmのウーファーだ・・・。と感じ、スピーカーの壁からの距離を変える。
次の日の朝を楽しみに小さな音でリピートをかけ、自らのセレクトで聴くのは久々になるビル エバンス「ワルツ フォー デビー」を。
どんなに「いい!」と思ったシステムでもこの曲を聴いてがっかりすることが多かった今まで。
何だかホッとしてしまった今朝でした。
さてさて、これから我が家でのEMPIRE調整日記が始まります・・・。