ビリー・ホリデイの歌が長らく苦手でした。
音程があがったり下がったりする感じが落ち着かなく思えたのだったか、
なんだったか。
苦手意識がなくなった後も、レコードは買ったものの
どういうタイミングでかけるのか、一度ターンテーブルに置いたきり、
なんとなく機を逸していました。
ここのとこの納品や調整の日々もちょっとだけ一段落。
そうは言ってもやることは色々あるのだけど、少しホッとして、
お客様のお宅で聴いたLP12の音が耳に残って、昨夜遅かったけれど
アンプの電源を入れて、ターンテーブルをまわしました。
わびしい食事を
せめてと気に入りの深い緑の器にのせ変えて、グラスにビールを注いでいたら、
あ。ビリー・ホリデイ聞こう。
と思いました。
彼女の歌声は、私の少し余裕のできた小さな隙間にぴったりと寄り添うけど、
決して甘すぎることはなくて、
体温があって、
彼女の体温は色んなものを内包していて、
暖かいとか冷たいとかそうじゃない、
喜びとか悲しみとかそれだけじゃない、
人生の色んなことが重たすぎず軽すぎず、実に良い重さで響いてきたのでした。
人生は続く。
仕事も続く。
それは、直線の道じゃなくて、立体的な広がり。
これから先は、彼女の歌を聴くことが増えるかもしれない。