眠れない夜のお供に、
ちょっと早く起きられた朝のご褒美に
読書は一つの至福の時ですが、朝と夜、読みたい本は異なります。
で、朝読(あさどく)と夜読(よるどく)
「薄明」を紹介したことがありますが、4部作のうちの「真昼」。
「薄明」「真昼」「夕映」「夜」
主に歌曲を取り上げたエッセイ。
なんというのでしょう。
たとえば・・・
素材が新鮮で、美味しいオリーブオイルにバルサミコ、質のいい岩塩と胡椒、それを有名店の人気シェフではなく、日に焼けた町のイタリア人のコックさんが美人にウィンクしながら手軽に作る前菜・・・
あるいは、食事の最後に出てさっぱりするフルーツとバニラアイスのマチェドニア。
あるいは、全然違うけれど京都・光悦寺の庭で山並みを見ながら朝もやの中鳥の声を聞くような。
そんな、
素朴で、
でも、あるとその日が素晴らしくなるような・・・
得した気分になるような・・・
そして、実はとっても贅沢な・・・
そういう本。
今まで知っていた歌曲も、深みと彩りを帯びて、
吉田秀和さんの経験や視点を通して、もっと好きになれる。
そんな本。
早起きした朝、深煎りの珈琲とこの中から一話読んだら、なんだか文化ビタミン補給できるようなそんな本。
クラシック音楽は・・・
歌曲は・・・
という方も、是非一度手に取ってみて頂きたい。
この中の「遠い世の香り」の章では、
日本語は、
美しくて、繊細で、たくさんのものを一度に伝えられて
なんて素晴らしい言葉なんだろう。
日本語が母国語でよかった。
もっと綺麗な日本語を話したい。
そう思いました。
でも、もしかしたらこういう彩りのある言語を扱っている日本人には、
これらの歌曲の美しさも、より一層感じられるのではないかと、
もしかするとですよ、
そう思います。
ある人が
「うなぎの本当に美味しさは日本人にしかわからないかもしれない」
と言っていました。
自分は日本人以外のなにものでもないから、どう感じるか体験できないけど、
そういうことがそれぞれの国にきっとあって、
私たちはうなぎの美味しさや、言葉の持つ繊細なニュアンス、
それを音楽にのせた時の美しさを、
もしかすると感じやすいかもしれません。
そう考えるのは、自己満足かもしれないけど、
そう思えるのは幸せなことだと思います。
吉田秀和さんの本を読んでいると、そんな風に思える。
本当に豊かな気分になる1冊です。
夜読は、一日のリセットをかけたい、そのために
エンターテイメントに徹します。
最近はスティーブン・キングの「ドクター・スリープ」。
これは1980年公開のジャック・ニコルソン主演の有名な映画「シャイニング」のその後の物語。
キング、これを書いたとき30歳。
そしてこの「ドクター・スリープ」を書いたのが53歳。
人気小説のその後が、筆者本人によって出版されるなんてファンにはありがたい話です。
(スミマセン、当時からファンというわけではありません)
しかし、この「シャイニング」映画と原作は割と解釈が異なるのだとか。
「ドクター・スリープ」を読んでから「シャイニング」を読んでもよいし、その反対でも・・・などなど、週刊誌だかなんだかに書かれていて、とりあえず映画は見ているけれど「ドクター・スリープ」から読み始めています。
筆力があるというか、キングの世界に引き込まれます。
That’s Entertainment!!
しかし、朝読にも夜読にも注意が必要。
朝読は、しんみりはまり過ぎて、出勤時間に間に合わなくならないこと。
(慌てて家を出ようとして、珈琲の入ったマグを落としたりしないこと)
夜読は、怖い場面で寝てしまって夜眠れなくならないこと。
(あるいは、夢に頭が陥没したようなお化けが出てきて驚かないこと)
・・・などなど。
それ以外は、読書っていいね!