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LINNの4種あるMCカートリッジのうち真ん中の2つ
KENDOとKrystalを同じアームARCO(超々ジュラルミン)に取り付けて比較してみました。

KENDOはKrystalの倍近い価格のカートリッジなので、情報量の多さなどは当然KENDOに軍配が上がります。
でも30万円のカートリッジだって十分高価ですし、Krystalは個人的にも好きなカートリッジです。

音の印象は一言で言えば、KENDOが男性的でKrystalは女性的。
骨格がしっかりして構築的なKENDOに比べ、しなやかで奥ゆかしい音楽性のKrystal。

構造からちょっと見てみましょう。

ボディは、いずれも超々ジュラルミンを使っていますが、KENDOのほうがガッチリしていますね。
Krystalは、カタログにヌードデザインと書いてありますが、カンチレバーを取り付けている部分は透かしになっていて、重量を軽くしています。

レコードの溝からいかに正確に左右の音を拾い上げるかということを考えた時に、50年ターンテーブルを作り続けているLINNがカートリッジに選択した形状としては、
「ボディは軽くしたいが剛性は失いたくない」
「3点留めにしてよりアームと一体化させる」
こと。

それで、ボディには高価だけど軽量で強度の高い超々ジュラルミンを使っているのですね。
しかもアームARCOも超々ジュラルミン製なので、どちらのカートリッジもマッチングは良さそうです。

カンチレバーは、昨今のハイエンドカートリッジでも良く見られるボロンがKENDOに使われています。
Krystalにはアルミチューブが。
特徴としては、上図に書いた通りで、ボロンのカンチレバーは、合わせるアームを選びたいところ。
一方、Krystalは同価格帯の様々なMCカートリッジの中でも情報量が高くて、奥行きが音の層の厚みとしてしっかり出るカートリッジ。
音色も美しいので、個人的には昔のLINN Krydeや、真面目系のカートリッジよりこれが好きで自分ではKrystalを使っています。
私のLP12は、SME KORE(SME専用サブシャーシ)に 3010Rを載せていて、重量級のカートリッジも使いますが、情報量豊かなオーディオに常々触れている耳には、どうしても痒いところの手が届かない・・・細やかさに欠けて、Krystalも使っています。

ただ店で3点留されたKrystalを見ていると、ヘッドシェルに2点留めしたKrystalが不憫に思われることも・・・

そうカートリッジの「3点留」って当たり前のように思っていましたが、お客様に「3点留って他にないでしょう」と言われて気づきましたが、とても珍しいのでした。

 

調べてみればLINNのカートリッジの3点留は20年近く前にさかのぼり「TROIKA(トロイカ)」から始まっているのだそうです。
トロイカって3頭立ての馬車。お洒落な名前をつけたものですが「3点留」への思いが良く伝わります。
ヘッドシェルに対して平面性を持たせたかったり、よりアームとの一体感を持たせるためで、よく考えればオーディオの中で一番の微小信号を扱うところ、常に動く針先のケースがガッチリしているのが悪いわけがないのです。
(話はそれますが、スピーカーにスパイクというものを付けたのもLINNですが、ユニット(動くところ)が収められたケース(キャビネット)が床の振動の影響をなるべく受けないようにする<音の出口>のと、カートリッジのこの造り<信号の入り口>、その先のターンテーブルの造り、良く抑えているなと思います)

Krystalのことばかり書いて、KENDOのことを書いていないのですが、値段だけのことはあるのです。
昨日ご比較されたお客様は、「演奏者のプレイを追っちゃう」と仰られていました。
針先がより正確に追っているのか、音の振幅が深い感じがするのですが、彫が深く、奏者の息遣い、呼吸が感じられます。
見えるような演奏が、お客様を真剣にさせて「こんなに聴き入って自分は疲れやしないかな」と心配されつつ「いや、俺はKENDOで聴こう!」となりました。
その音はお客様の経験として蓄積されていくので、ひとしきり眼前の音楽に驚いた後には、これまで聞いていた音楽より数段深い聴き方、音楽の深淵に近づいて行かれるのでは・・と思っています。
(竹田)

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