先週末、サウンドクリエイト本店で、
LINNの新しいテクノロジーKatalystの発表会がありました。
イベントは、15時―17時の2時間。
ありがたいことに多くの方にいらして頂きました。
本店はLegatoより広いといえども、
25名を超えるお客様ではギュウギュウ詰めで、エアコンの効きもイマイチ・・
お世辞にも良いとはいえない環境下でしたが、
皆様、音楽や本国スタッフのお話しに静かに集中されて、
質問大会の時にも沢山の質問があがり、大変充実した会となりました。
写真右が社長のギラード・ティーフェンブルン氏、
中央が、技術部長のキース・ロバートソン。
LINNのイベントは、いつも新旧比較を、旧モデルで2回、15-30秒ほど聴いて、
新モデルで30秒くらいかける、、とあまり長く音楽をかけることがないのですが、
これは代々続く(?)LINNのチューン・デモのやりかたで、
耳が慣れる為に、初め同じ曲を2回聴いてもらう。
そして比べる時は、違いは耳にした途端わかるので、特に長くは聴いてもらわない。
・・そういうやり方のようです。
今回も社長の挨拶のあと、このパターンで2曲。
従来のKLIMAX DSMと刷新された 「Katalyst」搭載のKLIMAX DSM新旧の比較
Queen「Killer Queen」
クリスティーン&クイーンズの曲(ロンドンで流行中のバンドだとかでポップス/ロックという感じでしょうか。)
この曲は初めて聞きましたが、
現行モデルが120インチスクリーンの4Kだとすると(それは十分のクオリティなのですが)、
新モデルでは音が前にぐいーーーっと出てきて、画面が視界いっぱいに広がって、
躍動感にあふれます。
Queenは、冒頭のフィンガースナップでさえ「Katakyst」の凄さが分かります。
フレディ・マーキュリーの声は、旧モデルだって文句なし。
比べると声のまわりに付帯しているモヤモヤがあって、新モデルでは、それが全くクリア。
楽器の音も何もかもが、クリアになって、見通しがよくなります。
「クリア」というのは、何かで綺麗に掃除して必要なものまで失ってしまうのとはちょっと違って、
音を比較すると、ギザギザが滑らかになった印象があるのです。
それはアナログにより近くなった感じ。
下図は、上がこれまでの技術、下が今回のKatalyst。
このKatalyst、LINNとしては第4世代のDACとなります。
第1世代:1991年 NUMERIK(KARIKというCDトランスポートと合わせて発売されました)
第2世代:1998年 CD12(ここ辺りから、トランスポートと別筐体では作らなくなりました)
第3世代:2007年 KLIMAX DS初代
今回:2016年 Katalyst
・・となります。
さて、Katalystについて、大きなポイントは、
「Reference Level(基準電圧)」を極めて安定したものとしてコントロールできたことです。
その前に、上の図を見ながら簡単にご説明。
真ん中の円の部分が、デジタル情報からアナログ信号を生成させる(Creation)のに最も肝心なプロセスとしてみてください。
その左側入力される(INPUT)ものとして、3つの要素があります。
・音楽を記録したデータ
・クロック(データに必要な水平方向のタイミングを管理)
・基準電圧
・・・そして、アナログ信号として出力される(OUTPUT)
このプロセスの始まりから終わりまでが、一般的にDAC(Digital・Analog・Conversion)と呼ばれる場所ですが、
この度のKatalystでは、「Reference Level(基準電圧)」に大きなメスを入れたそう。
基準電圧は、時間軸の振幅のベースになるもの。※
クロックが、時間軸の水平流れ(横軸)を制御するものとしたら、これは都度垂直の振幅(縦軸)を司る底流のようなものです。
すなわち、基準電圧が変動すると、データを掛け合わせて生成される振幅にも影響が及んでしまいます。
(※途中、bit数とは異なるのか?というご質問があり、解像度を表すためのbit数とは別のこととのこと。)
この基準電圧が安定したものであれば、より正確な信号を生み出すことが出来る。
今回の「Katalyst」では、話題になることがまれなDAコンバージョンのプロセスの基準電圧を極めて安定してキープすることが出来た。
このことが最重要ポイントなのだそうです。
そんなに大事なものなのに、なぜ今まで取り組んでいなかったわけ?
基準電圧が非常に重要であることは、LINNも各メーカーもわかっていたのだけれど、
そこまで理解して製品化されたDACチップがなかったのだそうです。
通常DACチップは、それ自体にクロックと電源を供給すれば、デジタルをアナログにコンバートしますよ、
という総合的なものなので、そのプロセス自体をコントロールできるというものは中々なく、
出来る限りLINNが自分たちでコントロール出来るものをずっと探し続けていたのだと言います。
今回AKMのチップ(日本製!)は、まさに思い描いたもので、優秀なチップでありながら、基準電圧についてLINNと同様の発想でとらえていることが判明。
LINNオリジナルの技術に柔軟に応えて、パートナーとして半年以上の共同作業を進行できたのだそうです。
今回のKatalystが可能になったのは、こうした背景もあったようです。
ちょっと勘違いしてしまいがちなのは、そのチップを買えば皆それができるのか?
素晴らしい絵具と絵筆、そして技術があっても、誰もがピカソのように描けるわけではないのと同じ。
音楽に置き換えればきっともっとわかりやすい。
素晴らしいストラディバリがあっても、鳴らし手次第で、それは語り継がれる名演にもなれば、
ストラディバリの音を聴いたというだけのことになってしまいます。
40数年、もっと音楽に近づきたいという日々止むことのない探究心で取り組んでいるものに、
そのチャンスが巡ってくるのは当然のことのようで、
それはやはり時間の流れの中で起こった素晴らしい化学反応・・・
それを促進させる、まさに触媒(=Catalyst)!と思ってしまうのです。