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LINN LP12がまた進化した。

LP12史上初めてメスを入れられたパーツ、Plinth(木枠)。
このBedrok Plinth(※)は、50周年記念モデルのLP12 50のために開発されたもので、それが今回製品として発売された。
(LP12 50とはデザインは異なる)

LP12 50が、990万円というすごい価格をたたき出していたので、この木枠がいくらになるのか話題にされてはいたけれど、それが242万という。軸受けも何にもついていない木枠だけで。
もうオーディオも変な所へ来たなという思いがチラっと過る。

新製品が発売されて、試聴するのを心待ちにしたり、ワクワクしたり、あまりそういう気持ちにならなかったのは初めてかもしれない。
LP12 50を聴いていたから「新製品」という感覚でなかったこともあるけれど、何せ高い・・何人がこれを理解してくれるのかしら。

届いて、持ってみると確かに造りはすごくいい。Plinthだけでも少し重量がある。
高密度のビーチ材の塊から削り出されるというガッチガチに硬いPlinth。
従来のPlinthのKLIMAX LP12SEと比較してみる。


カティア・ブニアティシビリ「Labyrinth」のどこまでも深いピアノの低音。
そこで弾いているよう・・というレベルを超えて、彼女の心に触れられそうな一音一音の存在感。
これこそが、コンサートとは異なるオーディオの醍醐味。
音楽に向かう「私」の集中力とその集中力を引き出すオーディオの音、それがコンサートを超えるのは、繰り返し聴いたレコードから今日また何かを発見し、音楽に近づいた瞬間だと思う。

クレンペラー指揮フィルハーモニー管弦楽団のマーラー2番とか、ペトレンコ指揮ベルリンフィルによるベートーヴェン第九の合唱とか、コーラスのセパレーション、楽器の位置などはもう当たり前の域で、録音場所の会場の空気が塊として出てきた。
それはもう触れるくらい確かなもの。
「録音」ていうのは、なんてすごいものなんだろう。
エジソンさん、ここまで来たよ。
時間も場所も超えてこういう塊が眼前に現れるのは、ドラえもんの「どこでもドア」にも通じるところがある。

クラシックばかリ聞いていたので、JAZZの名盤「Somethin’ Else」に針を落とす。
聞き古したというくらい店でもかけたし、レストランや街中(薬局!)でも鳴るくらい定番中の定番。
ハンク・ジョーンズのピアノとリズム隊から始まり、マイルスのトランペットが入る。
そしてキャノンボール・アダレイにバトンが渡される。
凄い緊張感。でも喜びに溢れているように聞こえるアダレイのサックス。
この盤はまぎれもない名盤だ、と初めて思う。

あまりに良く出来たレコードは、時折それ自体が固定された概念みたいになって、そこから何かを汲み取ろうとすることを忘れてしまうけれど「全く新しい」だけど「よく知っている」音楽として提示してくれる。

この不思議な感覚は、これだけでは何の意味もなさない高価な木枠にこれまでのLINNの積み上げてきた技術が載せられることで完成する。これを所有できるのは、限られた一部の人かもしれないけれど、50年同じものに取り組み続けてきた人たちが手掛けるものによってオーディオがここまで来たという事実を、多くの人に聴いてほしいと思う。

■BEDROK™
方向を変えて幾層にも重ねられたBeech材を高温度下で極めて高い圧力をかけて製造されるマテリアル。
その強度はスティールより高いと言われ、金属と同様に肉厚ブロックからの切削加工によって成形される。
そのため木材に直接ねじ込む木ネジを使用しない。
すべての固定ネジは埋め込まれた金属インサートに固定され、強度、耐久性に優れ、レゾナンスのほとんどない作りに。

LINN JAPAN メーカーサイト
(竹田)

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