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本日のLOUNGE、「クロサキ教授のオーディオ哲学サロン」第4回でした。
それも令和元年だからでしょうか。豪華版。
前回、前々回もお話伺った、古楽トラヴェルソから、モダンフルートまで自由に時代を行き来される有田正広氏と、クラシック音楽のピアニストとして、大・活躍なさっている上原彩子さんをお招きした会でした。

事前の打ち合わせから、演奏家のお二人には、選曲からずいぶん検討いただき、加えて黒崎教授の「これは素晴らしいから絶対みんなで聴きたい」というオーディエンス側の意見も入りながら綿密なプログラムの打ち合わせがあり、実際演奏した方の選曲で、その演奏が生まれた背景を伺いながら、アメリカタンノイのTudor AutographとLINN KLIMAX EXAKT350で演奏かと一緒に演奏を聴く・・・という、哲学的にはなんと表現したら良いかわからない、貴重な体験のできる会でした。
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中には印象的なフレーズがたくさんあって、文脈を置きざりにして一節を抜粋してしまうことの危険性を鑑みながらここにご紹介すると、、、

チャイコフスキーコンクールでの優勝が、日本人として、また女性としての快挙となったライブレコーディングを、LINN EXAKT350で聞かれた上原さんご自身は・・・
「この演奏をこうして聴くのは実に17年ぶりで、どこかで流れているものを聞いたことはあるけれど、こうして腰を据えて聴くというのは、初めての経験。今だったら違う弾き方をしたかもしれないと思うものの、この当時の年齢ならではのまっすぐさが残せたというのは幸せなことに感じる。」

黒崎さんが「これ以上ない演奏・・」と言葉を漏らしたことに対して、有田さんが「他の演奏を想像できないくらいの演奏、それだけ惹きつけられる演奏というのは、真の意味で素晴らしい演奏。それがなければ演奏家としては続けてゆくことができない」

上原さんと有田さんの出会いとして、上原さんが「ずっと、チャイコフスキーやラフマニノフといった音数の多いものを勉強してきた。それはその難しさがある。でも、音の少ないものの難しさというのもまた一方である。モーツァルトの楽譜を見たときに、どのようにアプローチしていいかわからなかった。それで古楽器のかたに教えていただきたいと思った。それが有田さんだった。」

有田さんは上原さんの現代のピアノでのモーツァルトの演奏を聞かれて・・・
「人の演奏で涙を流したのは紛れもなく初めてのことだった。モーツァルトは、楽譜を見れば涙が出る。そこには自分とモーツァルトしか介在しないため、他の解釈は含まれない。楽譜を見たときにいかにその理想を表現できるかが、メッセンジャーとしてのインタープリターである。しかし、上原さんのモーツァルトには、自分の思うモーツァルトがあった・・」
(「我思うゆえに我あり」)

有田さんは、古楽界のレジェンドと言われ、上原さんは現代を代表するピアニスト。
しかし、有田さんはトラヴェルソを演奏する延長線上にモダンフルートの魅力を見出し、一方で上原さんはモーツァルトならフォルテピアノ(今のピアノの前身)で弾きたいと思った。それはごく自然発生的なことで、有田さん曰く「楽器で音楽を伝えるのではなく、内容で音楽を伝えたいと思った」から。それに準じた道具(楽器)を使われたということなのだと思います。話をオーディオに逸らすと、OCTAVEの創始者であり、設計者であり代表のアンドレアス氏から全く同じ意味合いのことを聞いたことがあります。
真空管でなければならないということはない。でもアンドレアスの理想の音は、真空管を使うことによって再現できるものだった。(だからハイブリッドのものも製品として作っています)

KLIMAX350で、録音場所・年の異なる2枚のCDから、2曲続けて上原さんの演奏を聴いた後に「ここまで違って聞こえるものとは驚きだった、興味深かった」というコメントもいただきました。会の後に出た言葉でしたが、黒崎先生から「EXAKTだからこの違いが出たかも・・?」というつぶやきも、個人的に印象に残りました。

その他、今回有田さんのCDになる前の新録音(キングレコードより発売予定)も聞いたのですが、その録音に携わったプロデューサーも同席され、いっとき録音のお話が上がったりと、なんとも濃い、そして深い2時間半となりました。

今日の内容は、弊店の花木が録音してくれていたので、全文書き起こしできるか!?
夏休みの宿題になりそうです!!

ちなみに、本日のプログラムはこんな感じでした!!
20190706曲目リストのコピー
本日のプログラムのPDF
(竹田)

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