新入荷いたしました!!
でも、残念ながら既に売約済みに・・・
TANNOY GRF モニターシルバー12インチが入荷して参りました。
しかし残念なことに、入荷して調整を行ったあと、たまたま店頭にお越しになられたお客様が一聴一見でお気に召しになって頂き、
既に売約済みという、素晴らしい結果に・・・
でも、滅多にお目にかかることができないモニターシルバー、しかも12インチ。
こんな希少なものが入荷したからには今回のTIMESを通してご案内しないわけにはいかず、お客様にもご了承を頂き当TIMESにアップさせて頂くことに。・・・と暫く!?店頭に置いてある間、鳴らしていていいよ・・とご了承頂きました!!
このTANNOY GRFはモニターシルバーの12インチが搭載されているという、本当に希少稀なシステムです。
モニターシルバーは、1953年にオートグラフに取り付けられてニューヨークのオーディオショーに初めて登場した非常に珍しいユニットであります。
しかしこの話に出てくるモニターシルバーは15インチ。
フレームが銀色のハンマートン塗装を施した、見た目にも綺麗なユニット。
1953年~1957年ごろまで製造されたらしく、正式名は「LSU/HF15」です。
台数的にはそれほど沢山作られていないのが現状でこのユニット単体でも非常に高価です。
当然ながらモノラル時代のものなので、ペアリングできていることも非常に重要になります。
中でも12インチは極めて稀で日本にも数ペアしか存在しないのではないかと言われています。
日本にTANNOYが正式に輸入されたのは1958年にシュリロ・トレーディングが日本輸入代理店になってからのこと。
その際には、既にモニターレッドに変わっていたので、当時モニターシルバーが日本に入ることはありませんでした。
製造された年代が古いこともありますが、こうした経緯もあり、本当に希少なものなのです。
モニターシルバー12インチは、チャットワースと呼ばれる家庭用システムに搭載されていました。
デュアルコンセントリックの中でモニターブラックの直ぐ後に出ているユニットです。
今回入荷したモニターシルバーの12インチはセンターキャップがなく、保護用の黒い布でユニット正面が覆われています。
当時のものですから経年変化で布が破れてボロボロになってしまっているのがほとんどですが、これは布もそのままでオリジナル状態を保ったままのユニットです。
信じられないくらいの美品。
同じモニターシルバーの12インチでも後期(1957年に近づくにつれ)のものはセンターキャップがついているので、このユニットは恐らく1953年頃に作られたものと思われます。
また初期モデルはコーン紙も薄くなっています。
そして重要要素の「ペアリング」ですが、2つのユニットは、ほぼ同年代のもの。
これらのことからしても、今回入荷したモニターシルバー12インチが、いかに希少で
素晴らしいものであるか、お分かり頂けることと思います。
一方、エンクロージャーはヒノオーディオのGRF特注箱です。
ユートピア製よりも良い作りになっていて、1980年半ばに3ペア製作さられたうちの1ペアで年月が経っているので箱の乾燥もすすんでおります。
エンクロージャーのデザインは先日ご紹介させて頂いたアメリカンタンノイWindsor GRFをモチーフにしており、グリルが格子組になって家具調で高級感を出しています。
早速、鳴らしてみました。
何時も店頭で聴いているプレイリストで数曲聴いてみます。
良い、反応も良く凛々と鳴ります。
しかし、数曲聴いているとビージー・アデール トリオのAll the Wayが歪っぽく聴こえてきて・・・。
更にブラームスの交響曲や猪俣猛のThe Dialogueでも歪、低域のレスポンスがそれほどいいとは・・・
話に聴いていた「レスポンスが良く滑らかでキメ細かくエレガントな音色」には程遠いような・・・これは困ったことに。
こんなはずはないでしょう、ユニットに何かあるとは思いたくありません。
黒い布が悪さしているのでは、配線が何かにあたっている?
グリルを外してみると、一見、ユニットには問題なさそうで、少し安心。
黒い布にもしっかり覆われているし(黒い布を取った方が音が良いなどと聞いたことがありますが、それではオリジナル状態ではなくなりますので、出来る限り現状をキープ)、ユニットを止めているビスなどの緩みもありません。
サブのバッフルと元のバッフルも、かっちりネジで固定されています。
うーん、見ていても仕方がないのでグリルを外した状態で鳴らしてみることに。
やはり歪もでて反応がいまいち、曲を聴きながらサブバッフル板を抑えてみると・・・
おっ、歪がやわらいだ!
このエンクロージャーは元々15インチ用に作られたもので、バッフル板は15インチのユニットを正面から入れるように作られています。
今回、モニターシルバーの12インチを搭載するうえでサブバッフル板を作成しバッフル板とサブバッフル板をビスで固定していました。
しかし、そこに落とし穴が・・・
見た目が良いようにとサブバッフルをバッフルと同じ大きさに作っており、ビス4か所で固定していますが両バッフルが完全に固定(接地)していないのでユニットが動く度にバッフル同士が喧嘩して共振していることが判明、これが歪の大きな原因だっ
たのです。
このサブバッフルの設計は失敗でした。
そもそもこの手のバッフルは強固でないほうがよく、今までの経験上でも板自体の厚みがないほうが良いのでした。
考えてもみれば、バッフルを2枚(ダブル)にしているので倍の厚みになっていて、両バッフルを同じ大きさにしていたら面積も大きくなるので、モニターシルバーのレスポンスの良さも消されてしまうのは当然でした。
思い切ってサブバッフルもカットしてみよう、ということになり、昔取った杵柄、ではありませんが鋸を持ち出して四隅を大胆にカットしました。
とりあえず、片チャンネルのみカットした状態でサブバッフルを取り付けて、再度、試聴してみました。
・・・これは。
全然違う、バッフル板をカットした片チャンのスピーカーは歪がなく反応が早い、響きも良く豊かな音になり、左右全くの別物。
これなら聞いた話のとおりです。いや、もっと期待できるかも。
「レスポンスが良く滑らかでキメ細かくエレガントな音色」に近づいてきました。
*写真左が最初のバッフル板、サブがメインバッフルに覆いかぶさってます。
*写真右がカットしたサブバッフル。
もう一回り小さくしたほうが両バッフルの接地度がより高くなり、共振も低減できそうなので、縦方向と横方向も更に2cmほどカットしました。
再度、聴いてみると、左右のスピーカーの静けさや浸透力の差が歴然でした。
よし、これなら大丈夫!とは、全員一致の意見で、両スピーカーとも同じようにサブバッフルを綺麗にカットしました。
(カットした部分は綺麗に塗装もしました!!)。
低域の量感も出てきて良い感じになってきたので、エンクロージャー内部の吸音も見直すことに。
そうして初めて分かったのは、豪奢な造りのグリルとエンクロージャーの間でも共振を起こしていることでした。
ダブルバッフルに12インチを取り付けることで、15インチよりもユニットが前面につくため、グリル面とユニットが近接することになります。
その影響もあったため、グリルとバッフルの間(隙間)を吸音し、中域の厚みも増し、きめ細やかなエレガントな音色になりました。
最初に聴いたビージー・アデール・トリオのAll the Wayも歪が消え去りピアノの芯も出てピアノのタッチが非常にリズミカルになりました。更にBrahmsやThe Dialogueもキレが出て、低域の反応が良く空間感が、出て抜けも一段と良くなりました。
この反応のよさや切れ味は、おそらく「シルバーの12インチ」ならではでしょう!
今回は2つ大きな収穫があり、改めて勉強させられました。
一つはモニターシルバー。
モニターシルバーを初めて聴いたのですが、モニターレッド、モニターゴールドとの音色の違いは中域にあるのだと感じました。
前述したように、シルバーはコーン紙が薄く作られているので、低域のレスポンスが良いのは十分に分かりますが、弦やピアノ、Jazz、ボーカルなどを聴いているとワイドレンジではなく中域の厚みの余裕が抜群であります。
モニターレッドはステレオ時代に対応するように上下の音を伸ばしレンジを広げた感がありますがシルバーと比べてしまうと中域が少し薄く感じました。(それくらいシルバーは厚いのです)
そして、もう一つはエンクロージャーのちょっとしたことでかなり音に影響を及ぼすこと。
今回は、僅かではありますが思い切った加工で、これほどに歪や浸透力、音の抜けが変わるということを実感しました。
最後に・・・、このモニターシルバー12インチを聴けるということ、60年もの前のユニットでも意気揚々と音楽を楽しませてくれることの素晴らしさに感謝の念を覚えました。
最初にも書かせて頂きましたが、お客様がこのモニターシルバーを鳴らすためのアンプを探していることもあり、アンプ探しのお手伝いもさせて頂きながら、今年いっぱいくらいまでは、このTANNOY GRF モニターシルバー12インチを店頭に展示しておくことが出来ます。
売約済みになっておりますが、ご試聴いただけます!!
アンプ探し中につき、TANNOY GRFモニターシルバー12インチをOCTAVEやヴィンテージアンプ、更にLINN DS単体(アンプ内蔵)のエントリーモデルSNEAKY DSMなどで鳴らしてみたいと思います。
また、このTIMESでご案内させて頂きます!!