今回の積ん読は2冊。
面白くて眠れなくなるやつと、すぐ寝られるやつ。
★葉室 麟 /冬姫
織田信長の二女として生まれた冬姫の人生を描く歴史小説。フィクション、、、というか、史実に沿って物語を創造していると思うのですが、これがまたなんとも素敵な小説で、、。
実際この冬姫という人は父・信長の死や、夫・蒲生氏郷の早世(今でこそ40歳は早いけど当時はそうは言わないのか)など、さまざまな局面にあいつつ、81歳という当時戦国時代からすると超長い人生を生き抜いた人。
ストレスも多ければ、境遇も天と地くらい変わる、そんな中で長生きするのはこの人の運命もあるかもしれないけれど、きっと生き方とか考え方とか、身の振る舞いとか、色んなことがあったでしょう。
その長寿を納得させるような、冬姫という人の人物描写がよく描かれて、すっかりこのお姫様のファンになって茶々が嫌いになるという、、、。
世論とはなんとも気分的なもの?
それはさておき、この小説の中で、吉野の桜を見る場面で、天武天皇の和歌が引用されます。
「よき人の 良しとよく見て 好しと言ひし 吉野よく見よ 良き人よく見」
単純な解釈としては、「かつて立派な人がこの吉野を見て良きところと言った。その吉野を良きひとであるお前たちもよく見てみなさい」とあります。
戦国時代において、かつての人となる天武天皇が、更にかつての立派な人は、、、と詠んだ歌。
「良し」と「よく」を多用したこの歌が良いと感じられるのは、言葉の持つ概念を内包して良いものとして聞こえるのか、単に韻をたくさん踏むことで耳心地がよいのか。
いずれにしても、良きことも悪しきことも歴史にたくさんお手本があって、私たちはそれを如何様にも活用できる。今のような状況にこの歌は、音なのか意味なのかわからないけどとても知恵を与えてくれる一句のように感じます。答えは生活の近くにあるよ、、みたいな。
和歌など、学生時代の授業からこっち、まるで触れていないけれど、よき人々の知恵や感受性、心の持ちよう、自然との在り方、日本の奥深さ、歴史、そうしたものを知る意味で、最高の文化遺産だなと今更ながらに思うのでした。
この間の「ダブルエージェント 明智光秀」で、明智のファンとなり織田信長から少し気持ちが離れたものの、今度は信長息女の冬姫のファンとなり秀吉の妻茶々が嫌いになり、みたいになんと勝手な読者、、、というか後世に生きるものだけれど、戦国の世のさまざまな人生を多角的に読むことできっと見えてくるものがある。
ついこの前まで、学生時代の日本史の授業で止まっていたところからは大進歩。
もっと真面目に授業受ければよかったとはよく言うものの、今だから理解できる大人の事情だらけですもの。
読後感の爽やかな一冊。
★ギリシア神話集 /ヒュギーヌス 松田治・青山照男訳
これは、不眠症の人におすすめ。
3行読んだら眠れます。
羊数えるよりよっぽど効果あり。
ギリシア神話は、さまざまな絵や音楽、文学のベースになっているから読みたいのだけれど、完読できる日はくるのか、、、。
最近は諦めて眠れない時の眠り薬代わり。
写真は吉野の桜じゃなくて、帰り道の一枚。
(竹田)