マチルダという名の女が居る。
彼女は気分屋。
上等なものが好きで、束縛されるのが嫌い。
お金が好き。でも、執着はない。
猫のように身を翻し、
昨日帰ってきたと思えば、今日にはもういない。
つかみどころがなくて、愛嬌といたずら心で人を翻弄させるのが得意。
つきあった男たちは彼女を忘れられない。
・・・そんな女性がいたらどうでしょう。
でも、歌の中にはどうやらいるようですよ。
ベラフォンテが楽しげに調子良く歌いあげる「マチルダ」。
この彼女は「俺の金を持って」ベネズエラにとんずらしちゃいます。
悪い女なのか、だまされた「俺」が悪いのか。
でも、「俺」どうもマチルダを恨んでいるようには思えません。
この歌は1930年代SPAN NORMANの作詞・作曲で、ベラフォンテが初めて録音したのは1953年とか?(WIKIPEDIA情報です。あしからず)
「みんな、聞いてくれよ、マチルダがベネズエラに行っちゃったんだ、俺の金もって」
と歌い続けるこの歌。
今回よくよく歌詞を調べるまで、もうちょっと可愛い女の子のことを歌っているものかと思っていました。
しかし、マチルダどこへ行っちゃったんだろう。
ところ変わって1964年パリ。
シャンソン歌手のジャック・ブレル。
彼の作った「愛しのマチルダ」は、これまた大変な女性。
一度出て行ってしまったマチルダが僕の元へ帰ってくると大騒ぎ。
「マチルダめ、今回はやつの思うようにはさせない」
と決心を固めるように力強く歌うも、転調して「あぁ、どうしようマチルダが帰ってくるんだ。僕の元へ!」と、彼女を迎え入れる準備に余念のない様子。
まったく、大変な娘ですよ、マチルダは。
べネズエラに行ってしまったマチルダと、パリのシャンソン歌手が歌うマチルダは同一人物ではないと思いますが、どうもマチルダは大変な魅力を持っているよう。
私は、ベラフォンテの楽しいマチルダで、彼女がどんな人か知らずに好きになり、
8年前のオーチャードホールで80歳のグレコが「ブレルに捧ぐ」と言って歌ったのを聞いてマチルダの魅力のとりこに。
ちなみに、CDではグレコは「愛しのマチルダ」は確か収録していなくて、
ジャック・ブレル本人のこのアルバムでやっとマチルダを手に入れた次第。
ブレルは、フランスで国民的な人気があったそうですが、割とベタッ、ゴロッとした感じの歌声で、耳慣れないのでグレコのが聞きたいんだけれど、手に入らない。
耳の奥の記憶に任せます。
この歌はアメリカ歌手スコット・ウォーカーも英語で歌っているようです。
マチルダ、忘れられない女性。
でもきっと、
・・・彼女は本当は寂しがり。