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ここ数日、続けてMAJIK DSM新型の試聴のご予約があり、新・旧比較などしておりました。
MAGICO S1EXを鳴らしていた中で
「クラシックは鳴りましたか?」というお声がけも・・。
以前のブログでレポートすると言ってそれきりだった!

「鳴ります」「聴けばわかります」
なんてつまらないことを言う前に、モーツァルトのピアノコンチェルトの追憶を少々。

それは、まだ世の中にLINN DSが登場する前のこと。
ご納品や調整で八ヶ岳に何度か通ったお客様がありました。

当時80歳を超えてなお精力的に楽器を演奏され、1日何時間もオーディオに向かってリスニングルームで音楽に耳を傾ける。ベートーヴェン、モーツァルト、ブラームスが特にお好きで、新旧、様々な演奏家の様々なアルバムでCDラックが埋められていましたが、そのどれもきちんと聞かれたもの。
どのアルバムが音が良いか、演奏がいいか、まずいか、演奏はいいが録音がイマイチとか、大体把握しておられ、システムが変わると、録音がイマイチと思っていたものを聞かれ、良くなったと喜ばれる。

調整のあとは、何日か続けてお電話があって、ここが良くなった、あそこがまだ不満と言われ、「そんなこと言われても・・」と罰当たりなことを思う日もありましたが、「本当にいい音になったよ」と言われると、とっても嬉しくて、大げさじゃなく目が潤んだりするのでした。

そのお客様が当時「モーツァルトのピアノコンチェルトが鳴らない」とよく仰られていました。
シンフォニーは素晴らしいんだ。けれども、コンチェルトが思うようにならない。
特にモーツァルト。
ピアノが埋もれてしまって、ピアノの部分を聞きたいと思ってボリュームをあげると、トゥッティの部分でボリュームを慌てて下げる。忙しいんだよ。と。

私の調整の技術のせいやシステム・・というところももしかしたらあったかもしれない。
ですが、自分でもピアノ協奏曲って再生難しいな・・と思った覚えがあります。
ショパンやブラームスではあまりそういうことはなく、調整に大いに使っていたし、確かに思うようにならなかったのは、モーツァルトのコンチェルトだったと思います。
短調の20番や24番はメロディが好きで、それでも聞いていたけれど、長調の23番や27番は、当時面白さも感じられず、ほとんど聞かなかった。
返答に困って、自分自身の経験と合わせて「ピアノコンチェルトは難しいんですよね」とお答えした記憶があります。

そんなことを思い出すのは、この数日MAJIK DSMの新型でMAGICOを鳴らしたからでした。
ご来店されたお客様が、たまたまプレイリストに載せられたモーツァルトのピアノコンチェルト23番。

低域が遅れずに、オーケストラの楽器の音色がきちんと聞き分けられることなどをお話していると、
「ピアノも綺麗ですねえ!」
たしかに・・・。

当時、再生に限界を感じていたモーツァルトのピアノ協奏曲は、目の前で活き活きとしていました。
コントラバスが、チェロが何をしているか、
弦楽の美しく重なる中、オーボエが、クラリネットが、ファゴットが、ホルンが、現れては溶け込み、音楽の豊かな土壌が準備できたところでピアノの音色が美しく花開く。

あとになって、色々なモーツァルトの演奏を聞いてみました。

アンドレシェフスキ、内田光子、リヒテル、クララ・ハスキル、・・・
ハスキルなどはヴィンテージスピーカーで聴きたい気分もあるものの、いずれも当時聴いていた音とは明らかに違います。
ちなみに、クルレンティスのチャイコフスキー6番、3楽章の大きさの要る楽章でも、空気を刻みながら大きく空間を動かしていくような、クルレンティスのフレッシュな演奏がしっかり再現されます。

おそらく、LINN の最新DAC Katalystのテクノロジーによるところが大きいのではないかと思われます。
MAJIK DSM4も、Katalyst DACそのものではないですが、それ以降のものということで、Katalystで採用しているテクノロジーがふんだんに盛り込まれています。

DSの新旧でさえこうして今比較してみると、やはり楽器の編成が大きくなる時に、荒くなったり、低域が揺れたり、遅れたりしてしまいます。
アンプの制動力というのもプリアンプが司るものですし、新しいDACの威力はかなり大きいのではないかと思われます。

八ヶ岳の、あのお客様にこの音を聴いていただきたかったな、としみじみ思う秋の夕暮れでした。

(竹田)

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