場所は、秋葉原時代のサウンドクリエイト。
時は、入社して半年。Harknessやアナログ、ビル・エバンスのおかげでオーディオにも少し興味が出てきた頃。
店の試聴室を増やそう・・・という話が持ち上がりました。
秋葉原時代の店は、メイン通りから2本くらい裏手に入った、オーディオよりもメイド喫茶に「萌え」るストリートにあり、2フロアをめい一杯使って試聴室が5つありましたが、ホームシアターのご要望が格段に増えた当時、新たに本格的なシアタールームを作ることに。
お披露目は盛大に!!
とLINNの当時のフラッグシップKOMRIでOPEN準備を進めていましたが、最後はかなりスケジュールが押して、明日OPENというのに、まだ取り付けや設置が終わらない!!
女の子は帰ってーと帰宅命令が出て、後ろ髪惹かれながら帰り、
せめて・・・と朝は早めに出勤すると・・・
エレベーターが開いてまず聴こえてきたのはピアノの音。
え、まさかピアノ入れたりしてないよね。
と誰もいない試聴室に入ると誰かのうめき声が。
耳に入った音は、脳を刺激して涙腺を緩ませ、目には涙が。
変な感覚でした。悲しくもないのに。
ピアノの主はグレン・グールドで、そこはかとない漂うような空気の中、
鼻歌を歌いながらゴールドベルク変奏曲を弾く彼が、この秋葉原のビルの6Fにいたのでした。
立ち尽くしていると、後ろには徹夜明けのスタッフが皆眠そうな顔。
そこで「グールドのゴールドベルク」を知り、そしてKOMRIの低域を初めて体感したのでした。
でも、実をいうと、KOMRIの低域がこれだけすごい、と本当に分かったのは後になってからなのです。
しかしながら、体は覚えているんです、あの低域。
そこの空気を、演奏された時代に根底からばっさりと変えてしまうような、あの感じ。
忘れられない体験となりました。
LINNの話が圧倒的に多く出るのは、お店でそれだけ鳴らす機会が多かったということなのです。
あしからず・・・。