いつもいらっしゃるお客様に「タンゴ詳しい?」と聞かれました。
いやーピアソラくらいしか・・・
というところから、スタッフもう1人とお客様によるタンゴ講座が始まりました。
私には目から鱗の話が沢山。
タンゴは主に、「アルゼンチンタンゴ」と「コンチネンタルタンゴ」に分けられていること。
元は19世紀中頃にアルゼンチンで生まれた音楽。
コンチネンタルタンゴは、その名の通り大陸のもので、アルゼンチンから渡りヨーロッパで栄えたもの。こうした区別をしているのだそうです。
ですが、おもしろいのは、アルゼンチンタンゴで使われる「バンドネオン」は、元はドイツで生まれたものなのだそうです。
ドイツからアルゼンチンに渡った楽器で音楽の形がもっとキマって、また大陸に逆輸入というわけでしょうか。興味深い。
アルゼンチンタンゴに比べ、(私の印象では)少しマイルドになったコンチネンタルタンゴが、戦後の日本で流行ったそうです。更に、「黒猫のタンゴ」とか、有馬徹とノーチェ・クバーナとか、東京キューバンボーイズとか、タンゴの影響を大きく受けている音楽が日本でも生まれます。歌謡曲とブレンドしたものはきっともっとありますよね。
このあたりからいうと、ピアソラは「Tango Nuova」で、新しいタイプのタンゴだったのだそう。確かに、洗練されています。
代わりにアルゼンチンタンゴのカルロス・ガルデルなどをyou tubeで聴くと、ピュアな感じで音楽が魂と密接で、音楽と人生の間に何も挟む余地がないような「イコール生きている」感じがします。
そこからすると、もう少し思考が動くのがピアソラの音楽かもしれません。
映画「セント オブ ウーマン」のタンゴを踊るシーンで印象的な「Por una Cabeza(首の差で)」など、聴いているとしみじみと涙が出そうになります。
(映画の中でパチーノが「タンゴは人生と違って間違わない」という一言、タンゴという音楽のありかたを考えると、より深いですね。)
この流れはきっと時代の流れと、時間と場所の関係性に繋がるのだと思います。
(この話は脱線するからまたの機会。)
ところで余談ですが、ピアソラのTango Zero Hour(1986)の頃のものは、ジャンルも音楽も違いますがマイルス・デイビスの「Live Around the World」(1988-91)となんとなく繋がります。
ピアソラもマイルスも、1920年代に生まれ、それぞれ、92年、91年に亡くなっていて、
2人とも20歳前後に、マイルスはジュリアード音楽院に入学していて、ピアソラはアルベルト・ヒナストラ(アルゼンチンのクラシックの作曲家)の下で音楽理論を学んでいるそうです。
そして、上にあげたそれぞれのアルバムは、大体同じ年頃を生きた二人にとって晩年にあたるもの。
なんだかこの2人の対比も面白そう。
思いがけないタンゴ・フィーバーな1日でした。