時計が逆回りすることも、歩いていて足が後ろに向かって戻ることもないように、時間は前にしか進んで行かないので、辛さとか悲しみとかは後に置いて薄れて行きます。
しつこいのですが、先日歌舞伎界の三津五郎さんが亡くなったのは本当にショックでした。
新聞の追悼記事で辛口・演劇評論家の渡辺保さんが書いていましたが、芸の特徴の一つに「性根の正しく本格であること」と書かれていました。
こういう話になると、比べるわけではないのですが、ついLINNのことを思います。
LINNというブランドのユニークさや、音楽再生機としての素晴らしさは、既存の常識にのることなく、目的達成(レコードやCDに入っている音をそのまま出す)のために、何が大切かを見極めて、根本から物事を組み立てるところにあると思います。
ティファニーのテーブルマナーという本があって、これに書いてあったことで印象にのこっているのは、マナーの基本を理解していれば少々崩してもよいのだというようなこと。
あいにく手元にないですが、また読んでみたいです。
奇をてらったものや突飛なことは、マネをされればいつか普通になってしまうけど、根本や基礎を徹底的に理解できたら、そこにその人とナリが出てくるのだと思います。
三津五郎さんの話に戻って、すごく惜しく思われるのは、若手を育てることにも熱心だったこと。
「(自分より前の世代の)皆さんからの荷物を背負っているので、それをしっかり次へ渡して行かないと」
というインタビューも印象的でした。
歌舞伎界の話に限らずとも、銀座という街、録音芸術としての音楽、それを再現するオーディオ、これらに対して、そういう気持ちでありたい。
その気持ちを日々の中で薄れさせることのないようにいたいと思います。