昨日から(20日まで)LINNの新製品のパッシブスピーカーが店頭にあるので、スタッフでかわるがわる聞いております。
昨日はトールボーイの150が素晴らしくて、それに満足してしまい119を鳴らすのが今日になってしまいました。
普段ブックシェルフ派のワタクシですが、150の低音はイイ!低域をブンブンきかせて中高域の大切に鳴らしたいところを邪魔したりすることがなく、非常に心地よい低域でした。
すっかり聴き入ってしまいました。
で、今日から119を2階で鳴らしております。
何から書いたら良いでしょうか・・。
音離れ、音の回り込み、キャビネットからの解放感、バランス、倍音の感じ、響き方、正確なんだけどほんのり色気・・・
何だろう、これ、全部ある。
すごく正確なバランス取れた感じもあり、レコーディングエンジニアや、奏者、ミュージシャン本人にも聞いてもらいたい感じがするんだけれど、かといってモニターモニターしてるわけでもなく、倍音の感じはほんのちょっとだけBrodmannの端くれみたいなところもあるし、響き方はヴィンテージのスピーカーみたいなところもある。
なんですか、これ。
2ウェイ、バスレフポート、現代のスピーカーとしては捻りがないようにさえ感じる四角いごく普通に見えるスピーカーなのですが、次々と聞きたい音楽が浮かんでくるのです。
最初は、いつものプレイリストからボーカル、クラシック音楽、JAZZなどをかけていたのですが、あれ、こんな鳴り方するの・・・と、聴きたくなったのが
矢野顕子「星の王子様」「すばらしい日々」、荒井由実「魔法の鏡」「ひこうき雲」「翳りゆく部屋」、越路吹雪「ラスト・ダンスは私に」ペイネ 愛の世界旅行の映画音楽「Forse Basta」、坂本龍一「八重の桜のメインテーマ」、藤井風「きらり」・・そして大林亘彦と久石譲のデュエット「草の想い」
我ながらどんな選曲だ・・・と思いますが、心に浮かぶ好きなもので時折引っ張り出しては聴いてきた音楽なのに、今日119で聴いて少なからず発見があったのには驚きでした。
例えば越路吹雪のラストダンス・・は、歌詞の語尾が、ここは少し引きずる、ここはとめる、ここは広げるみたいなのが明瞭で、そのためより一層主人公の気持ちを繊細に伝えてくる。ここは我慢するわ、これは嫌なの。ここは思い切る、、、。
藤井風のきらりは、口の開け方が見える。だからここに微妙なニュアンスが生まれるのかー。音域に微妙な変化が生まれている感じ。これはカラオケでは無理だなとか。
荒井由美はどれも良かったけれど、魔法の鏡は、松任谷正隆のマンドリンが明瞭に入るのが寂しさを誘いつつ、ユーミンの一音一音への噛み締めるような思いが感じられ(歌い方は噛み締めてないんだけれど、一音一音に思いが乗ってるのがすごい)、心をちぎっては歌に乗せてるようにさえ思える。この歌元々好きだったんだけれど、ずっと同じ繰り返しみたいなのに「いいな」と思っていたのはそれでか!荒井由美当時20歳。それでこの感じ。大人びた中にこの歌詞の子供っぽさは、20歳だからこの雰囲気が出せているとも言える。深い一曲だったんだなぁ。ますます好きになった。
矢野顕子のすばらしい日々は、ユニコーンの曲をカバーしたものなのだけれど、ユニコーンのがこの歌詞の男性視点で、矢野顕子のが女性視点みたいに合わせて聴きたい。オーディオ的には矢野顕子に大きく軍配なのだけど調子の良さはユニコーン。ただ、落ち着いた大人の女性の低血圧気味に始まって、終盤気持ちの昂りを見せるところ、これ泣かせるな。
大林宣彦監督が、赤川次郎原作の「ふたり」という映画を撮って、中嶋朋子と石田ひかりの姉妹の話の主題歌で、監督作詞の素敵な詞を載せて、監督自身と、作曲を担当した久石譲の2人がおじさん声でデュエットするという曲なのですが、これがまた美しいメロディで、それに音域も音程も辿々しいおじさん2人の声が乗るのですが、それがまたいい。中嶋朋子のバージョンがあるようだけれど、これはおじさんデュエットが抜群に良い。その辿々しさが、ヘタウマがはっきりと如実に出るのだけれど、なぜか青白いLEDライトで意地悪く全てを照らし出す感じにはならなくて、大林監督の想いの深さと久石譲の照れ臭さのデュエットになっていてとても微笑ましい。
すっかり長くなってしまいましたが、このスピーカーは、ミュージシャンが大切にしているものを描くスピーカーです。
(竹田)