
ここのところ密やかな映画ブームで、暇があれば観ている、、と言っても昔観た映画ばかり。ストーリーや落ちがわかっているから、集中力を要せず見られるとか、突然目を逸らすようなバイオレンスとかとってもどん底に落とされるとかなく安心して見られるとか、そんな理由で、どうも初めて観るものが億劫だったりして、年取ったのかなと思ったりする。
★ ペンタゴンペーパーズ/最高機密文書 3回目
2017年の映画。え、もう10年近く前なのか。自分が観た中ではかなり新しい映画の部類だったので、いかに新しいものに触れていないかと言うこと。メリル・ストリープとトム・ハンクスのダブル主演で、スピルバーグ監督。オスカー常連の人たちで「面白くないわけないでしょ」みたいなメンバーで面白くない映画はたくさんあるけれど、これは面白いし、良い映画だし、3回目でもしっかり観て同じところで泣いた。ウォーターゲート事件の報道という一本の柱に、女性が仕事することの大変さ(しかも新聞社といういかにもな男性社会の長。家業だからたまたまおはちが回ってきた的な)と葛藤、報道することの意義、信念を通すことの強さ、などなど、実話だから一層面白く、勇気付けられます。これはスピルバーグじゃないと撮れないよなーと言う映画。
★ ダイヤルM 4回目くらい
ヒッチコック監督のではなくて、グィネス・パルトロウとマイケル・ダグラスのリメイク版。この映画はグゥイネス・パルトロウがいかにも上流階級の若奥さんで、焦茶のムートンとか、エルメスのケリーとか、カルチェの時計とか、オシャレに映されていて、若い頃このスタイル憧れたなぁ。しかし何度見ても、毎回、事件の流れの同じところで「そうなんだっけ!?」と驚き、デビッド・スーシェ(名探偵ポワロの人)が髭を剃って出てくるのに驚く。次に見るときも驚くのだろうか、、。
★ めまい 3回目
これはヒッチコック監督。10年おきくらいに見てるせいか、これもまた同じところで「そうだったっけ!」と驚きましたが、「めまい」の表現などに、アニメーションと実写を混ぜた箇所などがあり、実験的にこういう撮り方をしたのかわからないけれど、当時きっと色んな可能性を求めたんだろうなぁ。映画魂が愛しいように感じられる。
★ 羅生門 2回目
この映画音楽を担当しているのは早坂文雄と言う作曲家で、黒澤監督がラヴェルのボレロ風の音楽を注文して「羅生門のボレロ」とあだ名される曲を作ったのだそう。なんとラヴェルの著作権関係者から「盗作疑惑」まだかけられたという。・・・という文章を読んで観たくなりました。この元ネタは、レコード芸術の連載をまとめた『音楽放浪記世界之巻』片山杜秀著(ちくま文庫)にあります。羅生門の映画の性質とボレロの反復を重ねたという話。冒頭から「本当だ!ボレロだ!」となりました。
★ 華麗なるギャツビー ディカプリオ2回目 レッドフォード4回目
やや飛ばし見でしたが、これは難しい。どっちか観るとどっちか観たくなる。ロバート・レッドフォードじゃあ、ギャツビーとしてはちょっと綺麗すぎる(これはレッドフォードを観るための映画)し、ディカプリオの方が「らしい」のだけれど、あの映画はちょっとやかましすぎる。あと、キャリー・マリガンは女優さんとしては好きだけど、デイジー役はやはりミア・ファローがイメージなんです。キャリー・マリガンのデイジーはただのあざといぶりっこに見えてしまう。でもギャツビーの成金感とかよくわからない不気味さはディカプリオいい線いってるのよねぇ。ちょっとコメディタッチすぎるところもあるけれど。本が読みたくなる。
★ ヴィスコンティ映画週間 全部初めて
というのも設けていたが3本で挫折。処女作の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」、「熊座の淡き星影」「ベリッシマ」。どれも手付かずのままになっていたDVD。郵便配達は長くて3回に分けて観ることになった。いつになっても郵便配達は出てこず、終わってしまった。このタイトルは暗喩だったらしい。「熊座・・」はイタリアのC.Cことクラウディア・カルディナーレが主演。イタリアの古い名家の姉弟の近親相姦をベースにしたサスペンス仕立ての映画で、全然いやらしくはないというか、カルディナーレが終始怖い顔で睨みつけていて、それが怖かった、がさすがヴィスコンティで、これはまたもう一度真面目に観ようと思った。「ベリッシマ」は「ヴィスコンティ映画では珍しい喜劇モノ」と解説にあった。喜劇は涙が付きもの、というかそうでなきゃ本物の喜劇ではないな、と思う。時代の空気だとか、イタリアの貧しさとか、ヴィスコンティは貴族だったのに、そういうものを描くのが大変上手いと、改めて思う。
(竹田)