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もう15年来になりますか。
Legatoの店頭に立ってすぐの頃、当時12時開店だった店の看板を押しのけて「殿様商売だな」と開店少し前に入ってこられたお客様。当時5丁目のスタッフが担当していたのでお目にかかるのが初めてだったのですが、以来年に一度いらしてレコードをまとめ買い。いつからか「なにかお勧め頂戴」ということで、選ばせていただいた中からこれとこれとこれ・・・とお求めになられます。

今日はお客様から久々のご来店のお電話をいただいたので、レコード選定。
お題は「楽しいレコードね」とのこと。難しいけれどやりがいのあるお題じゃありませんか。
早速、店内の富士レコード在庫と新品在庫からざっと選んで聴きどころと音チェックを。

10枚くらいとのことだったので、お客様の「楽しい」の幅を考えます。
この路線が「楽しい=OK」ならこの方向でご案内、NGならその路線は全部落選。
そんなこんなで、より分けたのは約30枚。

普通に「楽しい」

JAZZギター、ケニー・バレルのレコードは「スウィングしなけりゃ意味がない」や「ビリーズ・バウンス」が軽快なリズムを刻み、昼夜聴ける落ち着いた楽しいを。
初めて名前を知ったBuck Clayton(バック・クレイトン)はトランぺッター。ベイシー楽団にも在籍していたのだそう。このアルバムはその後の46年に録音したリーダーアルバム。スイングJAZZだから「楽しい」し、趣のある古い録音は昔のラジオを思わせます。が、ただそんな「雰囲気だけ」アルバムじゃないのは奏者ゆえ。
エリントンの「JAZZ PARTY IN STEREO」は、ディジー・ガレスピーまで参加して、まさにパーリー!!これが1959年の盤なので、おそらくモノラルとステレオの両方あったのでしょう。赤い帯で「IN STEREO」とまで入っているものと、モノラル盤はそこの部分が赤く抜けて「JAZZ Party」だけになっていたり、紫の四角で「JAZZ PARTY」の文字を挟んでみたり。名曲ぞろいだし楽しいアルバムだけど以前にもおすすめしたような気もしてきた・・それなら、マーティ・ペイチが編曲と指揮をしたレイ・チャールズとベティ・カーターのスイングありバラードあり幸せな雰囲気で「楽しい」満載のデュエットアルバムがいいかな。
ほか、ディオンヌ・ワーウィックのバカラック・ソング集や、安定のアンディ・ウィリアムズも念のため。


ナベサダこと渡辺貞夫のこんなアルバムも見つけました。ピアノはプーさん(菊池雅章)。ドラムは富樫雅彦。ジョビンの「FELICIDADE」「カーニバルの朝」の他、ナベサダの作曲のボサノバ・ナンバーも収録。静謐と言いたいような何とも穏やかさの漂うボサノバアルバム。
お客様のご興味ひかなければ、買おうかな・・・。
ポール・デズモンドのこのアルバムは、見本品。だからか音が良いような・・。このジャケット素敵じゃないですか。
傑作!とまではいわないけれど演奏も、チャーミングで良い。。これも「いらない」と言われたら買おうかなぁ。
そしてカーメン・マクレエはやはり歌が上手い!サイモンとガーファンクルとは全然違う様相の「サウンド・オブ・サイレンス」
ところで、上に挙げたベニー・カーターは、そのマクレエをして「really only one jazz singer」と言わしめたボーカリスト。

マリリン・モンローはジャケットもライナーノートもなくて、レコードに裏表モンローの艶姿が印刷されています。目が回りそうです。
何が入っているかは聞いての「お楽しみ」。ちなみに1曲目は「紳士は金髪がお好き」の中の「ダイヤが一番」でした。
原題は「Diamonds are a girl’s best friends」ダイアモンドが複数形になっているところが殿方には怖いところですね。
他に、ピーター・クラウスとマーク・バードのギターデュオで演奏するサティ作品「Satie For two」とか。

クラシックなら、最近ポッドキャスト絡みで好きになったこのあたり。
ベートーヴェンの弦楽四重奏7番(ラズモフスキー伯爵から依頼されて作ったカルテットの3曲のうちの1番目)
ジャケットも気が利いていてとてもいいけれど、少し盤質が悪いかなぁ・・。
ラヴェルの「マ・メール・ロワ」は管弦楽よりもピアノのほうが「楽しい」かなぁ。。しかしこのラヴェルの盤のジャケットもいい絵だと思ったらゴーギャンの絵でした。こんな絵が描いてみたいものだなぁ。
メンデルスゾーンの無言歌集はバレンボイムのピアノで。
これは静かで可愛らしい小品づくしで、「楽しい」じゃないかなぁ・・。しかし美しいからダメ元でかけてみよう。
この3枚は微妙路線。

短調の曲を「楽しい」とは言わないかもしれませんが、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番を聴く心は喜怒哀楽を識るものとして。
でも、B面は23番だから楽しい。そして、これまた知らなかったけれど、Monique de la Bruchollerie(モニク・デ・ラ・ブルショルリ)というフランス女性ピアニストの演奏が素敵。タッチが結構軽快な感じ。軽快というより打ち棄てるように弾く・・・冷徹?なような演奏が、素晴らしく魅力的です。いや、これ「いらない」と言われたら買おう。
同じ20番でもマリナー指揮のブレンデルがピアノを弾く盤は、盤の状態も良好で音もクリア。少し硬質にさえ思える、男性的な演奏。
カップリングの24番もモーツァルトらしさをたくさん感じる美しい曲。
この他に、安定のフィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲集。声が安定感がありすぎて見事でもはや「楽しい」。
シュワルコプのライブは、「An die Musik(音楽に寄せて)」も入って素晴らしい。が、少々録音が古いか・・。
ストラヴィンスキーの「春の祭典」(ショルティ)ベートーヴェンの第9番(ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団)も、録音も盤も良好で演奏もよくて見方によれば「楽しい」のだけど・・。

カーネギーホール、85周年の時のコンサートのライブ録音レコード。
奏者が豪華!!
バーンスタインに、ディスカウに、ホロヴィッツにメニューイン、ロストロポーヴィチ・・・
そんな面々が一堂に会するなんて、当時のNYにタイムスリップしたいものです。
付属のパンフレットがまた「楽しい」。1976年の5月18日のカーネギーホールと書かれていると、当時何をしていたのかしら・・と記憶を辿っちゃいますよね。まだ生まれていなかった!!!

富士レコードの委託レコード、宝庫でした。
時々中身入れ替わるのでよく見ないと・・・

ちなみにちゃっかり自分用にも買いました。

追記 ところで冒頭の「殿様商売」は今では笑える思い出話ですが、コロナ以来13時になってしまった弊店の営業時間に「ずいぶん優雅なんだねぇ」と近年は言われています笑

(竹田)

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