有機的な響きは音楽好きの琴線にふれる・・・Brodmann VC1のご納品。
初めてLINN LP12をお納めさせていただいてから丸5年。その間にDSMやLP12のアップグレードで何度かお伺いさせていただきました。
ある時、オーディオルームに鎮座するPIONEER S1EXに優しい眼差しを向けながら、
「この人が家に来たときは全然鳴らなくて・・」ずいぶん研究して部屋を整えて、1-2年かけてやっと良くなって、それからはこのシステムでまとまって、こうしてアップグレードすればきちんと応えてくれるし、なかなか次へというスピーカーがないんです。
ただ、1本50kg近くあるので、セッティングも大変で、、と笑いながら
「次にスピーカーを変えるときは、もう少しコンパクトなものにしたい。」と。
常々、そういうご要望は多く頂きますが、必ず前置きがあります。
「今聴いている音のクオリティが下がるのは困る。」
コンパクト化だけが本意ではないということ。
さて、スピーカーの筐体を小さくしてクオリティを上げる、、しかも並大抵の上がりようではつまりません。
ほとんどの場合、お使いの愛機にはセッティングの苦労の汗と涙、喜びと思い出などたくさんの付加価値がつきます。
新しいものは、それを超えても余りある良さがなければ。
前置きが長くなりましたが、心のどこかで「もっとときめかせてくれるもの」を抱えていらしたのか、数年の間時折いらしてさまざまなスピーカーを聴かれては「我が家のをもう少し鳴らそうと思います」と帰られるのでした。
いつのことだったか、Brodmannがちょっと気になりますね、とふらりとご来店。これは中々いいですねと帰られることが2回くらい。
昨年11月のウィーンフィル演奏のブルックナーのコンサートの前に立ち寄られ、混雑していた店内で満足なご案内もできない中で「やっぱりよいということが確認できました」とお帰り。
このコロナ渦で13年共にしたスピーカーのちょっとした不調をきっかけにされてか、晴れてのご納品となったのでした。
お部屋に入った感じを見て「丁度いい大きさ」
KLIMAX DSMとKLIMAX TWIN/Dに接続し、準備完了。まずはピアノ曲から。
一曲聴き終えて「これはこのスピーカー導入のお祝いの曲なんです。レ・フレールというピアノデュオ」
ベーゼンドルファーを使っているので、一曲目はこれだなと決めていらしたとのこと。
3カ月近くもお待たせしたので、色々なご準備をされていたご様子でした。
続けてリファレンスに使われているギターデュオ「デパぺぺ」や、MIYABIのギター、マーラーの5番、レコードで上原ひろみとカスタニエーダのハープのデュオ、モーツァルトのレクイエム、石川さゆり、など幅広く聴かれたあと
「、、、ちょっと拍子抜けしています」
(ワタシの心の声)「えー!?!?」
・・・スピーカーの納品当日は、経験上本来の音は期待できないものと思い、調整しながら良さを感じていくのだとそんなつもりにしていた。
最初からこんなにまとまるとは思っていなかったので、驚きであり、拍子抜けでもあると。
一番心配はオーケストラだったけど、これだけ鳴ってくれれば心配も払拭された。一つのウーファーとは思えない鳴り方。
最初がこれだったら、もっと良くなるだろうし、末長く楽しめそうで、これにして良かったとつくづく思う・・・
「拍子抜け」の言葉に一瞬出た冷や汗は、すぐに引っ込んで嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
オーディオファイルの方にはスピーカーを伴侶と表現する方も少なくないですが、それほど大切な存在です。
仲人?の様な我々は、スピーカーの納品は、楽しいものでもありますが一抹心配なところもあります。
何の心配もなくなった納品の帰り道は、つい饒舌になるのが私達の常であります。
(竹田)