シツコイですが、ハマっているNetflixドラマ「ザ・クラウン」の、とある回のエンドロールに、シナトラの歌うこの曲が流れました。
この頃の倣いというのか、大抵の場合ミュージカル発端で、後々JAZZのスタンダードになることが多い気がしますが、コール・ポーターがミュージカルのために書いた曲。
考えてみれば、「歌」って、恋人同士の出会い、別れ、好きな人への想い、失恋の痛み、などなど何かしら設定の上で詩があって、物語の中ならもっといろんな細かい設定ができる。その中で歌う恋心は性別、国、時代を超えて普遍的になります。物語が前提にないと、状況説明も歌に入れなければならないから説明的になる。説明が多いと共感も薄れる。
だから、こうして残ってきているものって、ミュージカル発の歌が多いのもわかる気がします。古事記や百人一首が今も読まれるのも、同じでは。最高に短い歌。詠み手が誰かと言うだけで、状況がはっきりする。現代人から見てもその心に思いを馳せることは、時代錯誤の難しいことではないはず。
ちょっと脱線しました。
この歌、Just One of Those thingsって、「よくあることの一つ」という意味ですが、歌詞を追っていくと、全然そうじゃない。
そう思うしかない、つまりもう恋の結末はそこにあって、ひっくり返すことができない、取り返しがつかない状況で、引き際に泣いてもすがっても相手の気持ちは変わらない。そもそもそんなことができるタイプではないのです、この主人公は。だから「Just One of Those Things」なんていう言葉が出るんです。自分の気持ちの落としどころを求めて。
多分、歌っている彼/彼女は、相手に歌い聞かせることもしない。できない。一人で、酒に飲まれながら、自分をせせら笑う。そんな歌。
で、シナトラは、最後のフレーズの「So,goodbye,dear,and Amen」のところで、「So,goodbye, goodbye,bye bye goodbye, baby,dear,and Amen」とヤケクソ風にバイバイを3回も4回も重ねるのです。
これがまた!イイ!
大人の歌です。
他のいろんな人、ペギー・リー、ナットキング・コール、エラ・フィッツジェラルド、オスカー・ピータソン伴奏のルイ・アームストロング、など聞きましたがこの曲は俄然シナトラが素晴らしい。シナトラはネルソン・リドルのアレンジで、すごくしっとりしていますが、ビック・バンドが入ったりアップテンポなものも多く見られました。
そして、またこの本の解説も素晴らしいのだな。
(竹田)