店の定休日は、駒場の日本民藝館へ。
民芸運動を起こした柳宗悦の旧家の向かいにあり、柳宗悦が中心となって設計した建物。
こじんまりした展覧会を時々やっていて、建物の空気が好きで時々訪ねます。
今回は、目的があって、この展覧会でした。
「片野元彦の仕事」
白洲正子著「衣匠美」で、この人の名前・・というか作品を目にし「まあ、なんて素敵なんだろう」と、ウットリ眺めることしばしば。
藍染の絞りといえば、色の入ったものもありますが、その多くは白と青。
この二色で織りなす世界のなんて多彩なこと。
私はこの人のことをよくよく知らずにいたのですが、今回初めて民藝館で実際の手仕事を目にして「この人のことを知りたい!」と、雑誌「民藝」を手にとりました。
そうしたら、柳宗悦や河井寛次郎とつながっていたのですねぇ。
もう随分前になりますが、母の勧めで河井寛次郎記念館に行ってその手仕事の世界にえらくハマり、寛次郎の書いたものなどを読んでいた時期がありました。
片野元彦は、当時の藍染絞りの現状を嘆いた柳宗悦の勧めで、藍染の道をゆくのですが、その年57歳。(もちろんそれまでも染物はしていたようですが)
その時、柳が片野元彦にかけた言葉が「ものをつくる心を河井寛次郎に、染色の道を芹沢銈介に学べ」。
このことを知って、2つ感銘を受けたのが、
その道、57歳で始めたこと。
もう一つが「ものをつくる心」。
片野元彦の藍染は、斬新。
かと行って奇をてらっているわけでもない。
伝統を勝手な解釈で崩している感じでもない。
でも、歌舞伎でもそうだけれど、伝統はただ漫然と守るだけでは、きっと残していけない。
きっと、次に伝えていく人が、常に挑んでいかないと続かないものなのだと思います。
片野元彦もその道に入ってから、相当悩んで、苦労した様子を民藝誌で読みました。
まだ興奮冷めやらぬ中、すぐに自分に思いを馳せる私は、ああ私は本当に「てしごと」が好きだなあと思います。そして、わたしの扱うオーディオを、果たして人が「てしごと」と呼ぶかわからないけれど、OCTAVEとか、今度のBORRESENとか、LP12とかは「てしごと」だと確信しています。それとLINNのものづくりの心は、また少し違うのだけれど、根っこは一緒なような。
好きなものは全部繋げたくなるので、どうでしょう、反論もあるかもしれませんが、この彼らの「てしごと」を正しく伝えていきたいわ、といつもオーディオに繋げてしまうのでした。
…いつも終わり方が一緒。学生の時に読書感想文の最後に「〜ということを学びました」と締めるのが抜けておりませぬ。
(竹田)