江戸風俗研究家でありエッセイストであった杉浦 日向子さん。
46歳という若さで亡くなってもう十年になります。
グルメ家と知られ、無類の蕎麦好き(蕎麦屋好き)で大の日本酒好きでありました。
ソバ屋好きのあまり、ご自身と仲間たちでソビエト連邦が崩壊した1991年にソ連(ソバ好き連)を立ち上げました。
蕎麦屋好き、と書いていますが著書の「ソバ屋で憩う」のあとがきに、こんなことが書いてあります。
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【ソバ好きとソバ屋好き】
「ソバ大好きなんですよ!」というひとには二種類あります。
うまいソバのためには、いかなる悪条件をも乗り越えて、ひたすら邁進する求道者型。
又は、食後に、湯上りのようなリラクゼーションを堪能する悦楽主義者型。
つまり、前者が「ソバ好き」、後者が「ソバ屋好き」となります。
私は、まごうことなく後者です。
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恐らく、ソバ好きは、美味い蕎麦のためならどこへでも、自分自身でも蕎麦を打ったり、家でも蕎麦を食べたりすることで、
ソバ屋好きは、お蕎麦屋の雰囲気や蕎麦以外のアテやお酒が好きな人のことを言うんでしょう。
そうなると自分もソバ好きではなく、間違えなく「ソバ屋好き」になります。
そしてお酒も大いに好きであった杉浦さん。
同書にこんな一節が。
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ソバ屋で憩う、昼酒の楽しみを知ってしまうと、
すっかり暮れてから外で飲むのが淋しくなる。
いまだ明るいうちに、ほろ酔いかげんで八百屋や総菜屋を巡って、
翌日のめしの仕入れをしながら着く家路は、
今日をたしかに過ごした張り合いがある。
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一日の最後をお酒で〆るのではなく、
昼間の余韻を楽しみながら、買い物をしたり散歩をし夜を迎える。
粋な休日の過ごし方だと思いました。
そんな粋な杉浦さんを真似てみました。
蕎麦屋のランチ時の忙しい店内の中、行きかう店員さんの声、次々とお盆に乗せられて運ばれていく蕎麦。
賑わいを見せる店内の奥のテーブルに陣取り、少々肩身の狭い思いをしつつ、
昼間から蕎麦前と少々のお酒を楽しみました。
たまに自由の利く休み、
気持ちよく昼酒を楽しみました。
三浦 祐士