「バイブル」何巡目かです。
発行されたのは2011年ですが、元々は1969年、明治生まれの歌舞伎役者と演劇評論家の対話です。さまざまな文化人の名前が出てきて、全ては把握しきれないけれど、やり取りの中にものごとの本質がたくさん詰まってて、背筋を伸ばしたり泣けてきたり自省したりする。
文化人と書いたけれど、そもそも「文化人」なんて言葉を使ったら、このお二人に「それだからだめなんだよ」「そうやってなんでも簡単にまとめるもんじゃあねぇ」と言われそう。
「芸」ということに対して厳しい眼を持っていて、演るほうは偉ぶっちゃいけない、観る方もありがたがっちゃいけない、みたいな感覚がある。それは「芸」を育てるも零落させるも人だからなのでしょう。
このお二方、あんつるとフグミツ(フグで亡くなった8代目)の対話には、指南書とか自己啓発本的な「〇〇になるにはこうするべき」みたいなところは一切ないのだけれど、仕事においても生活においても「そういう気持ちでするべきだなぁ」と感じることが多々あったり、人が何に喜び何に悲しむのか、とても単純だけど見落としがちなところを教えてもらうところもあり、この方々を知ってる知らない、歌舞伎を見る見ない以前に、素晴らしい1冊なのです。
これは私のバイブル。時々何かを忘れてないかな、と開く本。江戸弁も心地よい。
(竹田)