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歌舞伎で「肚芸(はらげい)」という言葉があります。
セリフや大きな感情表現で演技するのではなく、深い思い入れで演技するというもの。
たとえば、悔しさや哀しさを、喚いたり泣いたりして表現するのではなく、体で表現する・・・何と説明したらよいのでしょう。
まさに肚で演技する。
ベテランの役者さんなどの演技では、怒りや哀しさなどはしみじみと観客に伝わって、観客を舞台にのめり込ませます。
実際の話でも大げさに泣いたりわめかれると、あまり共感できませんが、感情を抑えているのを見ると、逆にこちらの涙を誘う・・・ということありませんか?
「肚芸」、江戸から明治に変わる時代に生き、主に明治時代に活躍した9代目団十郎が残した大いなる遺産です。
そんなことを、クラシックの音楽を聞いていると時々思います。
古楽派というわけではないのですが、弦などあまりビブラートかけすぎるような演奏だとか派手な演奏は、あまり好みではないのです。感情の広がりは、抑え目が好き。
「うっとりするような演奏」は、うっとりするように演奏するのではなくて、聴いてうっとりしたいです。
でないと聴き手が感動する余地がなくなっちゃ様な感じがします。
プロの演奏家で、そんなことを思って演奏する人はいないでしょうが、音楽性の違いはそれぞれなので、そこをどう聴くか、聴こえるかでしょうか?
必ずしもどれがいい悪いの話ではなくて、好みの問題ですけれども・・・。
そういうわけで、ブラームスなどのロマンティックな曲は、ギュンター・ヴァントの演奏が好きであります。

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